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報酬とは働くことによって得られるものすべて。内的報酬は満足を生み、外的報酬は不満をおさえる

報酬とは働くことによって得られるものすべて

報酬とは何でしょうか?

多くの人が「賃金」のことだと思っているかもしれません。しかし実は報酬とは、働くことによって「得られるものすべて」のことです。

例えば田坂広志『仕事の報酬とは何か 人間成長をめざして(2008/7/1,PHP研究所)』によれば仕事の報酬とは「能力」「仕事」「成長」だと書いてあります。

能力や成長はわかる気もしますが、仕事が仕事の報酬であるとは、一体どういう意味なのでしょうか?

報酬とは、賃金だけではない

企業の人材マネジメントにおける「報酬」とは、働く人が「仕事によって何を得られるのか」個人と組織の接点(タッチポイント)において「どんな嬉しいもの」があれば組織パフォーマンスが最大になるのか、という設計に他なりません。

例えば「納得感ある評価」によって賃金を「公平に分配」することも報酬ですし、組織内に「魅力的な仕事」を生み出し「適切に異動配置・アサイン」することも重要な報酬になります。

内的報酬は満足を生み、外的報酬は不満をおさえる

ここでは報酬を大きく2つに分けて考えていきます。「内的報酬」と「外的報酬」です。

内的報酬とは、仕事そのものから生まれる報酬のことです。仕事にやりがいがあること、キャリア開発の喜びを感じること、職場の仲間や仕事で知り合った人たちとの人間関係から得られた社会的満足、などです。これが満足につながります。

外的報酬は、外から与えられる報酬です。給与や昇進社会的な地位があがる、大きい椅子に座れる秘書がつく、などです。ここが満たされていないと不満につながります。

F・ハーズバーグ 動機づけ・衛生理論

内的報酬と外的報酬の基礎知識としてハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」を確認しておきましょう。ホワイトカラー(技術者と会計士)約200人を対象に、仕事に関する態度や満足感について面接調査を実施したところ、次のような結果となりました。

仕事の達成・上司や仲間の承認・重い仕事を任された責任・成長の実感・仕事をやり遂げる過程や成果のフィードバック、これらは人々を内発的に動機づける力となることがわかりました。これをハーズバーグは動機づけ要因と呼びました(内的報酬)。

一方、給与条件・福利厚生面・オフィスの執務環境・上司のリーダーシップへの信頼・職場の人間関係は、モラールの底辺を支える保障的条件だということがわかりました。これをハーズバーグは衛生要因と呼びました(外的報酬)。

外的か内的か、どちらかではなく両面を見る

こうして見ていくと、内的報酬こそが大切で、外的報酬はあまり重要ではない、と感じられるかも知れません。

確かにこんな主張もあります。エドワード・L・デシの「アンダーマイニング効果」、これは外的報酬をつけることで内的報酬が阻害されるという研究です。つまり好きでやっていた仕事なのに、その仕事に対価のお金が払われると、仕事への意欲が下がってしまう、というのです。

一方で、これに対して外的報酬を軽視することに否定的な見解もあります。例えば角山剛氏はインタビュー記事でこう言っています。

外部の評価や報酬を起点として行動を起こす「外発的モチベーション」を軽視するのは間違っています。なぜなら、外発的モチベーションがきっかけとなって、内発的モチベーションが高まることがよくあるからです。(中略)多くの人は成果を評価され、昇給・昇進するうちに、仕事がもっと面白くなったり、影響力の大きさにやる気が高まったりするものなのです。経験の豊富な人事やマネジャーの方なら、そうした例を何度も見ていることでしょう。(角山剛氏インタビュー記事『目標と報酬のないところにモチベーションは起こらない』より)

そして外的が内的を阻害するのは、目標が受容されていないときだ、と喝破しています。

組織における目標とは「自分がやりたいこと」でも「与えられたノルマ」でもなく「握手する」ものだからです。やる気が出ないのは、個人と組織が握手できていない時。外的報酬が問題なのではなく信頼関係そのものが問われているのですね。

さあ、外的と内的の両面から報酬を捉え、組織パフォーマンスを最大化する方法を考えていきましょう。


このnoteは拙著『人材マネジメントの壺 テーマ4.報酬』から一部抜粋して再編集したものです。ぜひ本編もご覧ください(^^)b







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