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新・家庭医療専攻医1年目のうちにやるべきこと〜ポートフォリオとは何かを知る〜

最終更新:2024年4月20日

専攻医となって早くも2ヶ月が終わろうとしています。
5月は4年ぶりの現地開催の学会参加もあり、私にとり新たな学びや気づきにあふれた1ヶ月でした。
ただ、4年ぶりに多くの人に会ったせいか久々に風邪でダウンし、ようやく回復してきたところです・・・。

さて、私は総合診療専攻医となり、まずは研修修了要件を把握するところから!との思いで、今まで2つの記事を投稿しています。

「専攻医1年目がまずやるべきこと」シリーズは、今回でひとまず完結です。
最後のテーマは、新・家庭医療専門研修のプログラムのポートフォリオについて。
ポートフォリオは、今まで書いた経験が少ない文章形式である一方で、新・家庭医療専門研修をする上で、決して避けては通れないものという印象があります。ポートフォリオの話題が全く上がらない新・家庭医療研修プログラムは皆無でしょう。不安に思っている専攻医は少なくないはず。

でも、何事も、まずは求められていることを把握するところから。
このnoteでは、新・家庭医療専門医取得において最も重要と考えられる修了要件・ポートフォリオについて、日本プライマリ・ケア連合学会学術大会で学んだことをもとにまとめています。それこそ、自分の言語化の訓練として、今回も公開することとしました。

専攻医の方は、ご自身の学会マイページから、ルーブリックをぜひダウンロードしてからご覧ください。

<注意!>本記事の筆者自身が、専攻医1年目であります。その視点から1年目でもできることについてのまとめを心がけました。あくまでご参考までに。


そもそも、ポートフォリオとは何か

ポートフォリオの一般的な定義は各種教科書の記載に譲るとして、新・家庭医療専攻医の修了要件としてのポートフォリオは、「学習や業務の成果の記録と、その振り返りをまとめたもの」です(出典:日本プライマリ・ケア連合学会基本研修ハンドブック改訂3版 p.504)。

特に、振り返り=省察を盛り込まなければならない、というところがポイントです。「省察が学びにとって重要である」という理論に基づき、ポートフォリオはこの省察と実践を促進するとされているからです。
例えば、現時点での自分はどこまでできているのか、どこができていなかったのかを考えることは、物事の上達のための第一歩ですよね。つまり省察は、成長するために必要不可欠な要素です。
ポートフォリオは事例に対峙した最初から、実践と省察を繰り返して得られた成果を言語化するので、まさに省察的実践の助けになると言えます。

私ならば、以下のようにポートフォリオを定義します。
家庭医のポートフォリオとは、「自身の経験事例の中で内省しながら学び、実践し、成長のために今後自分がすべきことを考える記録」であると。
それはまさに、成長に必要なプロセスそのものです。


ルーブリックとは何か

ルーブリック(評価基準)とは、ポートフォリオの評価基準を見える化したものです(出典:新・家庭医療専門医ポートフォリオ実例集 p.7)。
ポートフォリオを作成すべき20個の領域それぞれにおける学習目標と、評価のポイントが「優」「ボーダーライン」「不可」それぞれで示されています。ルーブリックが、ポートフォリオを書く上で最も重要な羅針盤となるので、学会のマイページから必ず最新のものをチェックしておきましょう。

ルーブリックの概要を理解することが、ポートフォリオ作成の第一歩です。


ポートフォリオにできるような事例とはどんな事例か

おそらく、多くの新・家庭医療専攻医が悩むのは、「どんな事例でポートフォリオを書けば良いのか」ということではないでしょうか?

「新・家庭医療専門医ポートフォリオ実例集」によると、以下の2つの要素を満たすものが、ポートフォリオ症例に適するとされています。

・ルーブリックに記載されている領域において、経験学習を通じて、一定水準の力を身につけたことを示せる
・困難事例や自分の感情が揺さぶられた事例など、自身にとってChallengingである
(出典:新・家庭医療専門医ポートフォリオ実例集 p.4)

前者の内容を見るに、「一定水準の力を身につけたことを示せる」という観点からは、ある程度経験を重ね実力がついた状態でのポートフォリオ作成が望ましそうです。
しかし、このような事例の蓄積には、専攻医1年目からの日常診療の積み重ねが重要であると筆者は考えます。そこで、後述する学習ログを、1年目から日々の症例で記載し続けることが、大いに役に立つのではないでしょうか。

ちなみに、ルーブリックの領域の中には、臨床症例ではない領域が存在します。それが以下のルーブリックの番号の領域です。

8,地域志向のプライマリ・ケア
10,臨床における教育と指導
12,チーム医療・ケアの調整や移行
13,システムに基づく診療
15,健康の社会的決定要因とアドボカシー及びアクセス
16,医療者自身のケア
(出典:新・家庭医療専門医ポートフォリオ実例集 p.4)

つまり、上記の領域では、症例を待っているのではダメで、専攻医自身がより計画的・主体的に動く必要があるということです。研修終盤になって、「え!」とならないためにも、このような領域があることは早めに知っておきましょう。


ポートフォリオはどんな構成で書くべきか

私自身、今まさに症例報告(Case Report)を書いているところなのですが、症例報告の構成とポートフォリオの構成は基本は同じでは、と思っています。ただ、盛り込むべき内容と重点が異なるのです。
では、ポートフォリオの構成を、症例報告の構成との対比で示してみます。

・表題
症例報告のTitleに相当します(当たり前ですが)。ポートフォリオの表題では、実践したフレームワークも簡潔に述べられたら良いですね。

・その事例を選んだ理由
症例報告のIntroductionに相当します。
ポートフォリオでは、この事例をなぜ自身の学習機会として捉えたか、どのように自身にとってChallengingであったか記載できると良いでしょう。

・事例の記述
症例報告のCase部分に相当します。
ポートフォリオにおける、症例報告との最たる違いは、ポートフォリオの中で最も重要なパートだということです(出典:新・家庭医療専門医ポートフォリオ実例集 p.4)。なぜなら症例報告では単に症例の経過を示すだけですが、ポートフォリオでは「実践の最中の省察(reflection in action)」をここに盛り込むからです。実際に自分がその事例と向き合う中で、自分がどう感じ、どう考え、どんな指導を受け、どんな風に対応に生かしたか、生き生きと書くことがポートフォリオの大きな特徴だと思います。

・事例の考察
症例報告のDiscussionに相当します。症例報告ではここが最も大事(私見)。もちろんポートフォリオで大事なところでもあります。
ポートフォリオでは「事例の記述」で「実践の最中の省察(reflection in action)」を盛り込み、「事例の考察」では「実践が終了した後の省察(reflection on action)」を盛り込みます。
そして最後は症例報告同様、今後の課題に焦点を向けて論じて締めます。
ポートフォリオの今後の課題とは、自らの成長と学びに関する課題(Next step)です。

(出典:新・家庭医療専門医ポートフォリオ実例集 p.4-5)


ポートフォリオは具体的にどう書いていくのものなのか

ポートフォリオ作成には、ルーブリックを熟読して計画的に進めていく必要があります。望ましい流れをフローにしてみました。

・ルーブリックの「領域」を把握する。
 ⇩
・ルーブリックの「優」の基準で、必要とされる記述を確認する。
「優」に記されている基準が、そのまま、ポートフォリオに盛り込むべき要素となります。
 ⇩
・領域に合う事例を探し、指導医のもとで言語化及び省察を行う。
 ⇩
・上記の症例の中で、一定水準の力を身につけたことを示せ、かつ、自分にとってChallengingな症例を選択する。
 ⇩
・ルーブリックの「優」の基準の要素を全て盛り込んで記載する。
 ⇩
・書きながら省察を深め、自分がどのように成長したか(ポートフォリオではここが大事!)、自らの成長のために今後何をすべきか考え、考察とする。

(出典:新・家庭医療専門医ポートフォリオ実例集 p.4-5, 7)


まとめ〜専攻医1年目からできること〜

ポートフォリオの概要を理解する。
ルーブリックの「領域」を把握する。いつでも見られるようにしておくのがおすすめ。
ルーブリックの「優」の基準から、ポートフォリオに盛り込むべき要素を確認しておく。
日常診療で毎回学習ログをつけておき、後からルーブリックに照らし合わせられるようにしておく。

参考資料(いずれも新・家庭医療専攻医におすすめです!)
・日本プライマリ・ケア連合学会基本研修ハンドブック改訂3版
・新・家庭医療専門医ポートフォリオ実例集

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