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FinTechプロダクトデザインのミートアップ【イベントレポート】

2024年8月1日、テック業界の多様な才能を集め、ナレッジや人材同士の交差を目指すコミュニティ「CrossRel」主催の「FinTechプロダクトデザインのミートアップ」が開催されました。

「FinTech」というテーマを扱った今回のイベントでは、通常のデザイナーイベントでは集まりにくい企業様・銀行様も多く参加され、最終的には100名を超える方に来場いただき大盛況のイベントとなりました。業界をみんなで良くしようという機運を感じられた場でもありました。今回はLayerXが2024年5月にオープンしたの東銀座の新オフィスを会場に、7つの企業・銀行がLTを行いました。

FinTechプロダクトデザインのミートアップとは?

「FinTechプロダクトデザインのミートアップ」は、FinTech業界ならではのデザインのノウハウ・ナレッジを、登壇や交流を通してシェアすることを目的としたイベントです。

FinTechサービスは私たちの生活の根幹に深く関わりますが、法規制を中心に制約も多く、デザイン・開発の難易度が高いわりには、ナレッジが行き渡りにくい業界でもあります。しかし最近では、FinTechはさまざまなサービスにエンベッドされつつあり、多くのサービス開発者が関わるようになってきています。幅広くナレッジシェアされれば、私たちの生活をよりよくするサービスがさらに広がるのではという期待からこのイベント企画しました。

このイベントの趣旨に共感していただいた方に多くご参加いただきました。FinTechサービスを展開する企業様のみならず、地銀様をはじめ金融機関の方にも多くご来場いただきました。

たくさんのご来場ありがとうございました!

イベント開幕

まずは、主催CrossRelのこぎそさんと、今回新たに運営に加わり、本イベントを企画したマネーフォワードのデザインマネージャー古長で乾杯の挨拶!

イベントスタート、乾杯!

その後、古長から改めて本イベントの趣旨を参加者にシェアし、イベントスタート!それではここから、各LT登壇者の発表内容を少しづつお届けします。

【LT1】実は大変!複雑なFinTech Designのための秘密兵器

最初に登壇したのは、PayPay株式会社のプロダクトデザイナーNinoさん。
同じく、プロダクトデザイナーAerinさんが通訳してくださいました。

決済を取り扱う機能のフローは複雑になりがちですが、Ninoさんは独自に「Ninode」という仕組みを導入して、ユースケースごとにフローチャートを整理できるようにしました。これがデザイナーやエンジニアなどのプロダクト関係者間の仕様理解やコミュニケーションの助けになり、デザインファイルも整理されました。

FinTechプロダクトの複雑な仕様をデザインデータにどのように残すかは共通の課題でもあり、貴重な事例を紹介いただきました。

「Ninode」の紹介記事はこちらです。


【LT2】意外と知らない銀行のハナシ

次に登壇したのは、みずほ銀行Design Leadの佐竹正之さん。みずほ銀行の在籍年数は16年、銀行の事情にはかなり精通した様子です。

提供するサービスは、銀行というビジネス上の特性、ルールや規制、社会的立ち位置による様々な制約の上で成り立っています。サービスのUIを検討する上でも、これらの制約が大きな影響を与えるという話を赤裸々に語ってくださいました。

また、銀行のお客さまのカスタマージャーニーは超長期であり、さらにすべてのセグメントのお客さまが対象になります。誰ひとり取り残さないためのサービスを提供することの難しさも語っていただき、とても印象的でした。

【LT3】ユーザーリサーチ、FinTechならではの苦労

次に登壇したのは、フリー株式会社(以下freee)プロダクトデザインマネージャーの96/KuRoさん。freeeでは全社的にリサーチを促進する土壌があり、日々様々なリサーチが行われていますが、今回はその中でもFinTech領域ならではのユーザーインタビューの難しさについて話してくださいました。

FinTech領域では特に個人情報の取り扱いに厳しいこともあり、ユーザー情報にアクセスしにくく既存ユーザーのリクルーティングが難しい話。インタビュイーと同等の知識をもってインタビューする必要があるため、深いドメイン知識の習得を求められる話。リサーチ結果に機密情報が含まれる可能性があるため共有が難しい話。どの話も共感しかない内容でした。

【LT4】"ならでは"のオーナー感を届けるオルタナの取り組み

次に登壇したのは株式会社LayerXデザイナーの林貴洋(@taka_piya)さん。ご自身が担当する、大型不動産・インフラなどの資産を対象とした資産運用サービス「ALTERNA(オルタナ)」で、どのようにオーナー感という価値を届けるかについて解説してくださいました。

大型不動産の資産運用の価値を”利回り”だけに限定せず、オーナーとしての所有感、満足感、高揚感をサービスとして提供するための様々な工夫をしています。具体例として月次レポートでどのような情報を提供するかの話をしてくださいました。

金融商品を取り扱う中での付加価値を、どのようにサービスで表現するか、非常に興味深い話を共有いただきました。

登壇スライドはこちらでもご確認いただけます。

【LT5】文字のためのグリッドシステム設計

次に登壇したのは株式会社マネーフォワード デザインリードの河原覚さん。50を超えるプロダクトを展開するマネーフォワードで、河原さんはデザイン基盤の構築の役割を担っています。FinTech領域特有のUI上の文字情報の多さにフォーカスして、文字を美しくUI上に配置するためのグリッドシステムについて解説してくれました。

グリッドは通常、コンテンツエリアを基準に設計されるものですが、文字を扱いを大事にしたい場合、グリッドの基準を文字にすることが重要と考えています。文字情報を含むエリアだけではなく、文字そのものがグリッドに収まっている状態であれば、文字全体が画面内できれいに揃います。これを実際のデモを交えて話してくださいました。

登壇スライドはこちらでもご確認いただけます。

【LT6】体験をデザインする銀行のビジョン

次に登壇したのはGMOあおぞらネット銀行 UXデザインチームリーダーの門馬大輔さん。GMOあおぞらネット銀行では「すべてはお客さまのために。No.1テクノロジーバンクを目指して」というビジョンを掲げています。

このビジョンの裏側にある社内の体制やデザイナーの役割について話をしてくださいました。GMOあおぞらネット銀行は社員の4割がエンジニアで、システムを内製化しているのが組織の特徴です。

銀行は当たり前の存在であり、全国民が持っているもの。使いたくて使い始める性質ではない。そのような存在として、ユーザーの声を聞いて自分たちで体験を創り上げていく大切さを語ってくださいました。

【LT7】「利用頻度を減らしたいプロダクトのモバイルアプリ体験を考える」の話を詰めていったら実はニュアンスが違った話

次に登壇したのは、ウェルスナビ株式会社エンジニアリングマネージャーの北原幹也さん。資産運用のためのサービスという性質上、日常的なアプリの利便性だけではなく、資産に対するユーザーの不安をいかに軽減でできるかが重要です。

北原さんは当初、不安を軽減するアプローチとして「利用頻度を減らす」という方向性で登壇を検討していましたが、内容を上司と詰める中で、それが本当にユーザーにとっての本質的な価値なのかを改めて考えました。

短期目線での「利用頻度を減らす」という方向性ではなく、10年単位の長期利用を見越して、ユーザーの目標達成のために寄り添い「目標達成のために一度忘れてもいい、ただ必要な時にはスムーズな体験を提供できる」という価値を大事にするというご自身のアンラーンの話をしていただきました。

登壇スライドはこちらでもご確認いただけます。

さいごに

本イベントでは、同じFinTechというドメインにも関わらず、ご登壇いただいた皆さんのLTの内容は多種多様で、多くのノウハウや気づきを提供できる場になり、参加者の満足度もかなり高いものになりました。

さらに、多くの企業、来場者を迎え入れることができ、業界内での交流として必要な場であると認識することができました。今後もこのようなイベントを企画したいと思います!次回をご期待ください!

会場提供いただいたLayerX様
イベント後の懇親会の様子

撮影協力:おやまだほーし(@houshi2
素敵な写真の数々、ありがとうございました!


「CrossRel(くろすれる)」は、テック業界の多様な才能を集め、本イベントのような異色なナレッジや人材同士が交差できるコミュニティを目指しています。 現在企画の実施が可能か、需要があるかを含めて検証中。アイデアや協力いただける方を募集しています。

興味がある方は、こぎそさん(@kgsi)までご連絡ください。

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