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プロダクト開発を成功に導くためのデザイナーの役割〜プロダクトの未来を描くワークの全貌〜

2023年11月現在、マネーフォワードで提供するプロダクトは55を超え、今も新サービスを開発中です。ユーザーは法人・個人・金融機関と幅広く、各領域でデザイナーが活躍しています。

そんなマネーフォワードのプロダクトデザイナーはいま、プロダクト開発でPdM(プロダクトマネージャー)と伴走体制を築き、より連携を強化する取り組みを進めています。

ここ数年で多くのプロダクトが誕生し組織が急拡大するなか、プロダクトによってデザイナーの貢献の仕方にバラツキがでてきました。それによりPdMやエンジニアなどのプロダクト関係者が、デザイナーに期待することの目線が合わない状態に陥り、改めてデザイナーが活躍する領域の定義をする必要がありました。

日常のプロダクト開発では、どうしても目の前の開発を目的としたデザインタスクがデザイナーの役割になりがちですが、それ以外の領域でもデザイナーの活躍を示すことで、広い領域でデザイナーが貢献でき、デザイナーキャリアも伸ばせる機会を作ることができます。

本記事では、これらの取り組みについて紹介します。

拡大する組織でのデザイナーの課題

プロダクトの数がまだ少数だった頃、マネーフォワードの組織は、各プロダクトチームがオーナーシップを持って開発に取り組むことを重視し、会社の中に多くのスタートアップ企業があるような状態でした。

各プロダクトにほとんどの裁量があるので、PdM・デザイナー・エンジニアのスキルに合わせて、役割分担もそれぞれでした。これによりデザイナーの役割がプロダクトごとにバラバラでしたが、この時はこの柔軟な状態が適しており、大きな問題にはなりませんでした。

しかし、現在BtoBバックオフィス向けのサービスを展開しているマネーフォワードクラウドでは、会計・債権債務・人事管理など機能ごとに役割を分けることでプロダクト数が増え、プロダクト同士の横断的な連携が重要なフェーズにあります。

この状況に合わせて、組織構造もグループ横断での連携を取りやすい形に変えていきました。しかし、ここでデザイナーの役割のバラつきに対して課題が浮き彫りになってきました。

特にデザイナーごとにスキルのバラつきが出やすい、プロダクト開発の上流の意識のずれにより、デザイナー同士の連携が取りにくい状態になっていました。PdMが下流の意識を揃えることより、デザイナーの上流の意識を揃えることの難易度が高かったということです。

理想は、グループでプロダクト同士が連携していている組織構造でも、PdMとデザイナーの役割が侵食し合い、助け合っている状態です。この理想を作るためには、デザイナーの役割も意識も、PdMの役割に広げていくことが重要だと考えました。

そんな課題が顕在化したころ、PdM組織での施策としてと、プロダクトの未来のビジョンを描くPdM育成プログラムがスタートしようとしていました。

このPdM育成プログラム(PdM Forward Program)の詳細はこちらをご覧ください。


プロダクト成功のためのデザイナーの役割

このプログラムでは、プロダクトの成功を目指し、プロダクトの長期的な未来を見据えて開発を進めていくことの重要性とそのためのマインドを培うことを目的としています。

そもそも「プロダクトの成功」とはなんでしょうか?デザイナーの視点だけで話をすると、ユーザーのペインを解消し価値を届けることは当然ですが、それが市場に受け入れられビジネスとしての成長に貢献できてこそ成功と言えます。

それは目の前のユーザーのペインを確認して解消するだけでは実現できません。プロダクトのビジョンをぶらさず、長期的に実現したい未来を見据えたプロダクト開発を行うことで実現できます。

そのためには、プロダクトにとって絶対に成功すると思えるビジョンを先に創ることが重要と考えます。自分たちのプロダクトがどこに向かっており、その過程としての開発であることをPdM、デザイナー、さらにはエンジニアも理解しながら開発をすすめることができれば、その場しのぎの設計をする迷走を減らし、目的意識をもって開発を進めゴールに近づくことができます。

このプロダクトビジョンをデザイナー自身が納得し設計することは、開発を運営する上で、非常に大事です。なぜなら、プロダクトとして機能を実現するエンジニアへの橋渡し役がデザイナーだと考えるからです。

デザイナーはPdMとともにビジョンを描く役割があります。このビジョンを深く理解し、UIデザインとして具体化します。そして、意図をブラさずUIデザインをもとにエンジニアと開発を進めます。プロダクト開発の成功のためにデザイナーがビジョン策定に加わる意味は非常に大きいです。

PdMの育成プログラムの一環である「プロダクトの未来を描く」ワークに、プロダクトデザイナーが合同参加することで、PdMとの強固な関係構築と、デザイナーの上流の意識統一を同時に行うことにしました。

デザイナー自身がビジネス観点も含めた"プロダクトの未来を描く"ワークを通して、現状のプロダクト開発の品質を底上げすることも狙いでした。


プロダクトの未来を描くワーク

この取り組みでは、PdMとデザイナーで以下に紹介されている「toB SaaSの作り方」に則って、プロダクトの未来の完成形を作るワークを行いました。

特に深く掘り下げたのは以下のプロセスです。

  • Step 1:徹底的にリサーチする

  • Step 2:解像度高い完成形を描く

  • Step 3:描いた完成形を広く深く検証する

  • Step 4:優先順位をつけながら広げた企画を畳む

参加したPdMデザイナーは2、3ヶ月をかけて徹底的にプロダクトの完成形を追求し、最終アウトプットとして「未来のプロダクト提案書」「未来のプレスリリース」を完成させました。

未来のプロダクト提案書に含まれるコンテンツは以下です。

この中で特に重要なコンテンツと、制作過程でのデザイナーの関わり方について説明します。


プロダクトビジョン

SWOT分析やインセプションデッキなどの戦略フレームワークをベースに、PdMのプロダクトに対する考え・想いをデザイナーの問いかけからキーワード抽出し、分類・整理した上で、共同でコンセプトに落とします。

コンセプトをより伝わるライティングにすることもデザイナーの役割です。

こちらは、とあるプロダクトのコンセプトを出すまでにPdMとデザイナーが整理をしたワークシートの例です。


"未来の"導入顧客リスト・導入事例

今は導入されていない、未来の顧客の導入リストを作成しました。ターゲット顧客の解像度を上げ、どのような企業のためにプロダクトを作る必要があるかの目線を、関係者全員で揃えることができます。

「大企業向け」「中小企業向け」のような曖昧なターゲット設定をすることを防いでくれます。

さらに、より理想的なターゲット顧客を2〜3企業取り上げ、実在する企業をベースに詳細な未来の導入事例を作成します。その顧客のどんな課題に対してどんな価値を提供するのかを具体的に明示します。

これは、いわゆるペルソナ設定にも近い取り組みですが、架空の企業を設定するよりも現実的な課題・提供価値を定義できます。


"未来の"画面デモ

実現可能性を考えず、理想の体験を追求した画面デモを作成します。これは未来のプロダクト提案書に書かれた提供価値が具体化されたときに、本当に顧客のニーズを満たすのかの仮説検証に使われる重要な成果物です。

普段、制約が多い機能改善のUIデザインを多くしているデザイナーにとっては貴重な機会です。


PdMとデザイナーの事前の期待値合わせ

普段UIデザイン制作のみをしている成長過程のデザイナーにとって、この取り組みはとてもチャレンジングな機会でした。ワークに先駆けて、プロダクトデザイナーの役割を改めて理解してもらうために、役割定義を明文化しました。

プロダクトデザイナーの役割
① UI/UXデザイン
② ファシリテーションスキルを活用しチームを引っ張る
③ PdM / チームの思考を引き出し、整理・可視化の面で貢献する

特に②③は、このワークで特にデザイナーに期待しているポイントです。この役割を意識して、本ワークの最初に、PdMとデザイナーの期待値合わせのワークも実施しました。

PdMには、未来を描くワークを通して自身が成し遂げたいこと、その実現のためにデザイナーに支援してほしいことを明文化してもらいました。併せてデザイナーには、現状の自身のスキルで支援できること、さらにその役割からチャレンジして越境できることを明文化してもらいました。

双方の期待と役割をすり合わせることで、お互いどのような分担で未来を描いていくかを明確化し、協力体制を作りました。


ワークの効果と今後の展望

本年からスタートしたこの取り組みですが、この1年で合計13名のデザイナーに参加いただきました。参加したデザイナーからどんな効果があったかを伺ったところ、以下のような意見をいただきました。

  • PdMのWillをより理解できるようになった

  • ロードマップも含めた戦略的・長期的なアプローチを考えやすくなった

  • そのために「今」デザイナーがすべきことは?というデザイナーの貢献の優先順位をつけられるようになった

  • PdMの役割にまでオーバーラップしやすくなった

  • PdMからの信頼とデザイナーへの期待値が増した

  • ビジネスにまで貢献しやすいデザイナーのスキームができた

この効果から、当初の目的であったデザイナーの上流への意識を高め、貢献範囲を広げることはできたのではと考えています。

さらに、デザイナーが今後のプロダクトチームで行いたいこととしては、以下のような意見もいただきました。

  • PdMと同じ視座で、ユーザーペインや業務ドメインの解像度をより上げていきたい

  • ビジネスや開発の短期的な意思決定が、理想のゴールから外れていないか立ち返りたい

  • プロダクトビジョンへの理解を開発チーム全員に浸透させていきたい

  • 未来のビジョンを描くワークをチームで自走して継続させたい

実際、複数のプロダクトでは、未来のプロダクト提案書を引き続きブラッシュアップしたり、エンジニア含め開発チーム全員に共有してチームの目線合わせに活用されています。

今後は、さらに多くのデザイナーにもこの取り組みに参加していただき、未来志向でプロダクト開発を進める動きをデザイナーも推進できる文化を作れるようにと考えています。


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