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非効率な旅

旅行をする時は、効率よく動きたいタイプだ。
何時に到着して、1日目はどこどこを巡って。
できるだけ移動時間を減らし、あちこち巡ってやろうと頑張ってしまう。


そんなわたしが、効率と対極にある青春18きっぷを買ってみた。
「移動しながら本を読みたい」とか、「高知から山を越える時に車窓から見える祖谷渓の景色が好きだから」とか、どれも大した理由じゃない。
そのくらい、ぽっと切符を買っていた。

目的地までは、乗り換え1回の片道3時間。
始発に乗らないと用事に間に合わないため、午前5時41分、高知駅発のワンマン列車に乗った。
こぢんまりとした車内には、早朝からばっちりメイクの女の子やスーツ姿でキャリーケースを引っぱるおじさん。
みんな朝早くからどこへ行くのだろうかと考えていたら、もう出発するみたい。
太陽がまだ登っていないしーんとした静けさの中、列車が動き出す。

トンネルをいくつか抜けたら、雪がちらつき始めた。
山間部へ入るにつれ、どんどんその量は増す。
そう言えば、3月なのに冬型の気圧配置だと昨日の天気予報で言っていたっけ。
銀世界へと変わる景色に感動していたらアナウンスが流れた。

「15分間停車します。お写真を撮りたい方はホームに出ていただいて大丈夫です。」

スマホやカメラを持って乗客が思い思いにホームへ出ていく姿は、昼休みに運動場に向かって駆け出す小学生と重なる。
誰も踏んでいない雪の上を歩いたり、真っ白に染まった街並みを写真に収めたりして車内へと戻った。
雪で喜ぶのは子どもだけじゃない。

高速道路を使えば1時間半の道のりを、普通列車に乗って倍以上の時間をかけて行くのはどう考えてもバカだ。
分かってはいるけれど、バカだからこそ見ることができる景色もある。

雪が積もった梅や菜の花。
雪化粧した山と山の間を流れる吉野川。
それに、電車を1本見送ったら、昔住んでいた街を歩くこともできた。

想像を超えた景色から予定していなかった散策まで。

「非効率」も悪いもんじゃない。


高知の楽しみ方を気ままに発信する #高知の歩き方 
高知暮らしのよみものを綴っています。
田舎を楽しむヒントをおすそ分け。

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