箱の中

最近私は毎日、箱の中にいる。
正確には私だけではない。
私の同僚も箱の中にいる。上司も箱の中にいる。
今の時代、みな大抵箱の中にいるものだ。

箱の中の君と目が合って仕方ない。
すると君が「やあ」と言ってくれた。私もおそるおそる「やあ」と返してみる。
思ったより声が出なくて自分でも驚いた。

気散じにときおり箱の背景を変えてみる。
君は大阪にいて、私は東京だけれど、今の君は南の島で、今の私はアメリカ西海岸だ。ややこしい。
いつか落ち着いたらどこかに行きたいよね、となる。
私もそうだね、と言う。

箱は増えたり、減ったりする。
増えると小さくなり、減ると大きくなる。
箱が突然ひとつになったとき、
とても自分が大きくみえて、何だかさみしくなった。

そんなとき、私は箱の背景を宇宙にしてみた。
光も音もない無限に広がる空間へと投げ出されたようで、とてもいい気分だった。

もうしばらくは、箱の中でやっていけそうだ。



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