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婆ちゃんが話す爺ちゃんの話

結婚は親同士が決めた相手とする時代でね。
どこの誰かもわからん人と結婚するのはほんと怖かった。
初めて会う日は嫌で嫌で仕方なかった。

一緒になってからは色んな事がようけあった。
戦争の時は名古屋におって一番上の子をおんぶして防空壕に逃げてね。
B29の爆弾が怖かったけど花火みたいで綺麗やった。
爺さん(婆ちゃんの夫)は運が良かったから武器を作る工場に勤めててね、戦争には駆り出されんかったから一緒に居れて良かった。

戦争終わって、しばらくしてこっち(地元)に戻って来たんや。
短気な人でね。散髪屋で初めて会った人と喧嘩して帰ってきたこともあったわ。
面倒見がええ人で人をよう助けて
就職を世話したり選挙も手伝いによう行ってたわ。
お洒落な人で出かける時はいつも背広を着て帽子を被っとったわ。

お前の父さんが小さい子供の頃、爺さんは女を作っとってな。
その女が1回だけ家に来たことがあった。
腹立ったから、その女に
「4人の子供付けて、おのれにくれてやる!どうぞ育ててください!」
て言ったらどっか行ったわ。
他にもあったけど今思い出しても腹が立つ。

せやけど爺さんが入院した時、神様に毎日拝んでお願いしたんや。
「爺さんを死なさないでください。私の寿命を爺さんに分けてやってください。」
神様に怒られたわ。
「それはお前の我儘や」
て、言われたよ。
爺さんが死んでから家に入ってくる蚊や虫を殺せなくなった。
こいつらにも家族がおるんかな?って思ったら可哀そうになって殺せん。

死んでからだいぶ経つけど爺さん枕元に来てくれてもええのに全然来てくれへん。
1回でええから来て欲しいなあ。


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