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いつまでも、あると思うな美術館

 自由が丘の「岩立フォークテキスタイルミュージアム」が閉館する、とのこと……

 先月行ってきたカンタの展示が、最後の展覧会になるという。
 さみしいかぎりであるし、大してお力になれず申し訳なかったなという気持ちになる。

 これまで、いくつかの美術館の閉館を見送ってきた。

 かつては御茶ノ水、その後早稲田に移転した、古筆・古典籍の「センチュリーミュージアム」。
 コレクションは閉館の数年前から段階的に慶應義塾へ寄贈されていき、完全閉館後の今年、慶應のミュージアムコモンズでお披露目の展示があったところだ。
 ミュージアムが入っていた早稲田の自社ビルの前を通りかかることが、最近あった。まだ真新しい、がらんどうのハコモノ。ガラスの扉には、閉館を知らせる紙がセロテープで貼りつけられていた。
 よく立ち寄った場所だったから、やはりさみしさは募る。コレクションが散逸しなかったことがせめてもの救いか。

 ホテルニューオータニ内にあった「ニューオータニ美術館」。
 近世風俗画のまとまったコレクションをもつだけあって江戸絵画や近代日本画の催しが多く、何度もうかがったものだ。池大雅の展示がとくに印象深い。場所柄、外国人観光客に日本文化を紹介する大切な役割も担っていたことだろう。
 現在、美術館が入っていた一角にはすっぽりと蓋がされ、ホテルのバックヤードかなにかに使われているようだった。
 あのコレクションは、いまも倉庫に秘蔵されているのだろうが……駒込の古河庭園内にある古河邸で展示するのはどうか。

 コンドル設計のこちらのお屋敷は、「ホテルニューオータニの創業者・大谷米太郎(1881-1968)が、美術館として再生する事業を晩年に立ち上げ」、現在も大谷美術館の所有・管理のもと建物が公開されている。実現すれば、きっとすてきなスポットになるはずだ。

 この手の話題でなんといっても欠かせないのは、今年閉館した原美術館。
 不可解な閉館・移転には、現代美術ファン・建築好きの誰もが首を傾げた。
 取り壊された跡地を確かめに行くことに気が進まず、また遠路はるばる移転先の伊香保まで馳せ参じることもできていないので、ここでのこれ以上の言及は避けるとしたい。


 ほかにも、名古屋ボストン美術館、信濃デッサン館、仙台の福島美術館、斎藤報恩会自然史博物館といった名が、そこで過ごした時間とともに思い浮かぶ。ぱっと出てこなくとも、まだまだあるだろう。
 美術品は集まり、散らばり、形を変えて受け継がれていくもの。その過程にあった、その空間でしかなしえなかったある輝きを共有できたことは、わたしにとっての財産となっている。

 いつまでも、あると思うな美術館。
 物心両面で、美術館をサポートしていきたいものだ。

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