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文学フリマ岩手 一般参加レポート

はじめに

 兼ねてより参加したいと思っていた文学フリマ。中々行ける機会が巡ってこなかったが、今回の「文学フリマ岩手8」で、ようやく初参加できた。参加と言っても売る側ではなく買う側だが。いずれ売る側になるべく、まずは雰囲気がどんなものか知ろうと思った次第だ。

文学フリマとは

 詳しくはリンク先に書いてある通りだが、ここでも少し説明しておこう。
 文学フリマとは、自分で書いた作品を本という媒体で販売するイベントのことである。ジャンルやプロアマは問わない。時には出版関係者など、文学に精通した人が来ることもあるようだ。

「自分が〈文学〉と信じるもの」が文学フリマでの〈文学〉の定義です。

文学フリマ公式サイトより引用

 一見お難く見える文章だが、私はそこまで気張る必要は無いと思っている。要は、物書きならば文章を書いて、本という媒体にして売ってしまえばいいのだ。ただ、売買に関しては商売ごとなので、気軽に何十冊も刷っていいというわけではないのは想像に難くないだろう。

文学フリマの雰囲気

 初っ端から余談だが、文学フリマ開催時間は11時からだった。私はそれよりも早めに宿泊先から出、歩いて会場へ向かおうとした。
 盛岡駅の観光案内所に行き、開催場所である岩手教育会館への道のりを尋ねると、
「バスが出ていますが、お乗りになりますか?」
 と返された。バスに乗ることを即決した。
 このバスというのは「でんでんむし」と言い、盛岡の市街地を循環するバスらしい。右回りと左回りがあり、なんだかカタツムリの殻の渦巻きを彷彿とさせる。車体には子どもの落書きのようなカタツムリが描かれていて、可愛らしい。
 会館へ行くためには「盛岡城跡公園前」で降りる必要がある。私は左回りのバスに乗ってそこを目指した。バス停は駅から3、4つ先、かかった時間は10分弱だっただろうか?
 左回りのバスでここへ降りると、なんと会館が目の前に建っていた。徒歩0分だ。道路を挟んで向かい側に盛岡城跡公園がある。まだまだ開催時間まで長く、私はそこでのんびり散歩をしてから文学フリマへと向かった。

 閑話休題。
 文学フリマの会場は、会館の2階にある。会場に着くと、受付でパンフレットとシールを貰った。このシールは来場者専用で、胸の位置に貼るものだ。おそらく出店者とこれを区別するためのものなのだろう。パンフレットにはブースの配置図などが記載されていた。
 主会場の前から既に出店があった。お弁当を売っている地元の店の出張販売と、文学フリマ岩手公式のブースだった。私は公式ブースに寄り、『イーハトーヴの夢列車』というアンソロジーを買った。詳しくはまた別のnoteに書くことになるのだが、この本は岩手にまつわる文学を集めて載せているとのこと。これは歴史上にある文学ではなく、公募で募集したものらしい。
 受付を過ぎると、左手に主会場、右手に試し読みコーナーがある。
 文学フリマではそれぞれのブースで売られている本を試し読みすることができる(試し読みに選ばれる本は、出店者の選択によるものと思われる)。その他Webカタログというものがあり、ここでも売られている本の概要を知ることができる。
 私は最初、後者を見て買いたい本に目星をつけていたのだが、試し読みコーナーに行くと、欲しい本が膨れ上がっていった。

 欲しい本をスマホにメモしていき、いよいよ主会場に入る。多目的ホールが使われており、入口側から窓側に向かって縦に列が成され、それが何本も横に広がっている。列と列との間は人二人が通れるくらいの幅で、通り抜けには体を横向きにする必要があった。限られた個人ブースで各々の個性輝くディスプレイの飾り付け、出店者と来場者の会話も「市場」という感じで、小さく「おぉ……」と声が漏れ出るほどだった。
 そして、出店数は115店。岩手でもこれだけの出店数なのに、都心に行くとこれの倍どころではないというから驚きである。
 当たり前の話だが、創作者というのは全国どこにでも居て、好きに活動している。しかし、今日この場に集うことで、改めて「創作仲間って、こんなにいたんだな」と思った。

クオリティについて

 ここで言う「クオリティ」とは、作品の中身ではなく、売り物の外見とディスプレイのことを指す。
 私を含め、いつか文学フリマで出店したいと思っている人達は、少なからずこう思ったことがあるはず。
「(作品やディスプレイの)クオリティはどのくらい高いのか?」
 実際見てきたが、ピンからキリまであった。こういう言い方をすると品定めしているかのように聞こえてしまうが、そういう目で見ていた訳ではない。色々様々あったというだけである。

 例えば本については、印刷機で印刷し、ホチキスで中綴じして終い。こういう出店者もいた。ほか、文庫本の見た目をしていたり、パンフレットのような縦長の本など。もう少し話すとするならば、私が見た中で一番凝っていたのは、豆本を売っていたブースだろう。まず、豆本を印刷できるのかというところから驚いたのだが、そこの出店者に話を聞くと、手作りだという。ここで度肝を抜かれたわけだ。無理もない。豆本6種類を5~6冊ずつ販売していたのだから。
 とどのつまり、俗に言う本の形は文庫本だろうが、ここ文学フリマでは、本の形状・大きさなど問われないのだ。

 続いてディスプレイについては、基本売り物が目立つような工夫がされていた。本立てにそれを立てるといった具合だ。ほか、テーブルの上に敷き布を敷いて他との差別化を図ったり、自身の出す本にまつわる物品を置いてデコレーションをしたりなど、本当に個性とこだわりが見えてしまうのだ。ここでまた凝っていたところの話をすると、テーブルがコース料理レストランのようになっているブースがあった。敷き布の上に食器とカトラリーが並べてあり、その上に本立てを用いて本が置いてあったのだ。
 だからといって、飾りつけしなければその人はこだわりが無いということではない。売る本の種類と量による場所の圧迫、あとは単純にお金がかかるからだ。

 おまけ話として、売り物ではない無料配布物の話もしよう。無料配布物というのはその名の通りで、文学フリマではフリーペーパーや名刺のことを指す。出店者によってはこれを用意しているところもあり、売り物を購入した時に付けてくれたり、「無料配布物だけでもいかが?」という呼び込み方法もある。これは必須というわけではないが、無いよりあった方が自身のPRに繋がるのだろう。

出店者との会話について

「出店者と来場者の会話も『市場』という感じで……」
 こう先述したわけだが、一体何がどうなって会話が発生するのか?
 売り物を買う時にそうなるのはもちろんだ。ほか、出店者に売り物について質問したい時(内容など)、その前に出店者が説明してくれる時、出店者・来場者側が話をしたい時(ファンだからなど)と、色々挙げられる。今回私が遭遇したのは、ここに書いたすべてだ。
 気になったのに聞かずじまいでモヤモヤ……という後悔をしないためにも、気になることは聞いてみるとよいだろう。ただ、行き過ぎた会話は厳禁だ。

個性輝く物書き達

 今度は文学フリマ会場にいた人達について話そうと思う。
 出店者も来場者も年齢層が幅広い。高校生くらいの子から初老くらいまでの人がいた。
 ドレスコードも無いので服装も様々。大体の人達は好きな恰好をしている。出店者側に面白い服装の人がいた。和風のウェイトレスのような恰好をした人や、着流し姿、羽織を着たりと和の要素が混じった服装だった。

文学フリマの支払いについて

 あえて項目を作って話すのには訳がある。コミックマーケットやデザインフェスタなどの販売会に参加した人はもしかしたら分かるかもしれない。
 何が言いたいかというと、販売会で出す紙幣は千円札のみにした方が、売買がスムーズに進むということだ。プラスして、支払いは基本現金のみで、出店者によっては電子マネー対応してくれるところもあるが、少数派だ。手間もかかるのだろう。
 私は今回、旅行で岩手へ訪れたので、何枚か一万円札を持っていった。一日目で文学フリマに向け一万円札を崩していたのだが、なんと2、3枚しか残っておらず、会場で一人おたおたしていた。近くにコンビニも無く、仕方なく文学フリマ岩手の公式ブースで崩すことになったのだが、私が一万円札を出すと、スタッフは慌ててお釣りを作りにその場を離れてしまった。
 そういう場を経験して私が思ったことはこうだった。「公式でこれだから、出店者側も困ってしまうかもしれない」。これは完全な個人の戯言なので、あてにしないでほしい。
 あり得るかもしれない話をするとしたら、ざっと見たところ、売り物はどのブースも(高くて)千円台だった。だから出店者側は、買う側が二千円を出して小銭でお釣りを渡す……と想定をして、小銭を多く用意し、紙幣は少なめ(或いは無し)で準備をしているかもしれない。
 出店者側の立場になったことがないので何とも言えないが、やはり紙幣は千円札に崩した方がよさそうに思う。

総括

 文学フリマ岩手に来場者として参加した率直な感想は、緊張もしたが楽しかったということだ。どの出店者も質問すれば答えてくれるし、逆に話しかけられたりもした。
 もしこれから出店しようかと考えている人がいたら、参加しようと思っている地域の会場に足を運んだ方が、雰囲気や感覚を知ることができてよいだろう。また、文学フリマに行くような本好きは、散財の場となるので、金銭には余裕を持っておくとよい。

帰宅後、買ってきた本の冊数を数える。
なんと20冊超えである。

 文学フリマで購入した本の紹介については、また別のnoteで書こうと思う。乞うご期待。

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