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番外episodeー地主さんから土地を守れないと言われた話ー

前回の続きは次週のお楽しみにしていただいて。
今回は番外編ではありますが、少し感じたことをお話しします。

地主さんから土地を守れないと伝えられる

私が農地をお借りしているところは
いわゆる生産緑地であり使用貸借で契約を結んでいるため
簡単に言うと、無償で貸借契約を結ぶ代わりに
地主さんから返却を求められたら期限内(約6カ月)に原状回復をして返却すること。

それは貸借契約を結ぶ際にお話ししていたことで分かっていることではありますが
先日、地主さんの奥様と雑談していた中でこんなお話しになりました。

農業を始めてみて、農家の内情が分かってきたんじゃない?
世間から見る農家と現実の問題は違うよね。
あなたにはそれを分かっていただいたうえで営農してくれているからありがたいわ。

昔はあたり一面農地だったけど、相続が起きるたびに農地がどんどん減っていったの。
うちも主人がなくなったら、ここの農地も(貸借している農地を残すことが)難しいわね・・・

頭ではわかっていても実際にご本人、またそのご家族からお話を聞くと
胸がきゅーっと締め付けられます。
地主さんだって、残したいに決まっている。それでも逃れられない税金をまかなうために農地を切り売りしなければならない。

農業を始めて気が付いたのは人の内情、家族構成などを嫌でも知ってしまうこと。
プライバシーなはずなのに「相続」というキーワードは敏感に反応してしまいます。

農地がなくなったらどうすればいいのか

農地の契約年数はあるものの、明日返さなければいけないのか
1年後なのか、10年後なのか、それは誰も分からないし予測もできない。

どこまで投資をするのか、どこまで開拓するのか
線引きも難しい決断になってきます。

大規模な設備投資はともかくとして
土壌改良や汎用性のある機械投資は無駄ではなく
必要なこととして割り切ることが大事なのではないかと思うようになりました。

永年継続して借りられない農地。
また、契約年数が決まっていれば計画を立てられることも
いつ何時何が起きるか分からないという見えない恐怖をどう解消していけばよいのか。

農地を広げるにしても、飛び地であれば移動距離がかかり
面積が狭ければ育てる作物も限られてきます。
条件のよい農地はそう簡単には出てこないですよね。
1年目は拡大はできませんでした。(その話はまた改めてお話しします)

見えない恐怖

新規就農すると、補助金や助成金を受けると継続営農年数が関わってきます。
簡単に言うと、補助金を受けると向こう5年間は営農必ずしてください。などの条件付きで交付を受けるものもあります。
次世代人材投資事業などは報告義務がありますので、必ず指定の期間は営農していなければなりません。
途中でやめてしまうと返金しなければいけない補助金も多くあります。

しかし、例えば1年後に借りている農地をすべて返却しなければならなくなった時。
事実上、営農は困難となります。
耕す土地がなければ、作物は作れないですよね。
この場合、営農意欲はあっても、実態が伴っていなければ返金しなければいけないのでしょうか。

万が一のことがあった場合、関わってくださっている
行政の方々は助けてくれるでしょうか。
杓子定規で切り捨てられてしまうでしょうか。

自分自身でどうにかできる術を身に付けていかないと
地獄に堕ちるのは一瞬だと危惧しています。

視点を変えてみる

営農とは、自分で農地を借りて自らの手で耕すことだけが営農でしょうか。
農地を拡大しなければ、設備投資をしなければ
一向に収入も上げられないですし、農地返還のリスクが伴います。

農地を貸す地主さんも、また農地を貸すリスクが伴います。
貸した農地が返って来なかったらどうしよう。
せっかく貸したのに荒らされたらどうしよう。
農業がつらくなって辞めたらどうしよう。
世間はなんというだろうか。営農もできなくなったと冷たい目でみられないだろうか。
複雑な思いがあり、作業は困難でもリスクを伴うなら貸さない方がましだと思う方も多くいると思います。

農地の貸借はしなくとも、お手伝いという形で参入し
貸すのは難しくても手が欲しいという農家さんのために
営農継続のお手伝いをしたり、耕作の代行をして収入の折版をしたり
もちろんそれに伴うリスクも多くありますが
色々な形があってもいいのではないかと思っています。

また、農業を広める活動や
地域での畑を活用したイベント、企業や学校、福祉施設が園芸作業を取り組むための支援など
農業に携わることでの営農も含まれてもいいのではないかと思っています。
NPO法人でこのような活動をされている団体も多くあるかと思いますが
個人で農家として活動している以上、限界もあり歯がゆい思いも多くあります。

農業としての多様な働き方を実現するには
もっと力をつけて、多くの人に認められ、
思いを実行できるように活動し
発信していきます。


多くの意見があると思いますが
あくまで個人の意見ですので悪しからず。

ご賛同いただける方がいらっしゃいましたら
ぜひ、お声掛けいただけたら嬉しいです。


長文になりましたが読んでいただきありがとうございました。


次回はシリーズに戻ります!
農業体験のお話しです。