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キョードー(共同通信)さんがやってきた!? 通信社と地方紙との深くて複雑な関係

突然の連絡でした。共同通信大阪支社のOさんから「うっとこ兵庫」メンバーへの電話です。「うっとこ」の執筆態勢について聞きたい、という依頼でした。noteに「共同通信・大阪社会部」のアカウントを見つけ、仲間が増えたと喜んでいたところです。こちらが隠すものは便宜上「本名」ぐらいのため二つ返事でお受けしました。12月某日、一眼レフカメラを手に2人が来社されました。今回はコラボ企画として通信社(共同通信社)と地方紙(神戸新聞社)との関係を、播州人3号が紹介します。

「キョードーさん」「コーベさん」と呼び合っています。

他県や海外に取材拠点のない地方紙は、通信社から原稿や写真の配信を受け、紙面や電子版に掲載しています。

神戸新聞の場合(そして多くの地方紙の場合も)、国政や海外ニュースを扱う紙面は共同通信の記事なしでは成り立たないといっても過言ではありません。
一方で、共同さんにとっても地方紙などに採用されて初めて、苦労して書いた記事が広く読まれることになります。
ざっくりと言えば、地方紙と通信社はそんな関係でしょうか。

紙面で見かける「共同」の文字が配信記事の印です。

「共同」の表記がなくてもスポーツ(運動)面などには配信記事が多く使われています。

編集フロアを歩けば、あちこちに「共同通信」「共同」の文字に出合えます。

配信記事が印刷されるプリンター
共同通信社向けの資料をまとめる「かご」

配信された原稿や写真は編集局にあるパソコンへと届きます。
毎日大量の配信があり、「政治」や「社会」など分野ごとにまとめられた「メモ」が朝夕に届きます。

紙面のレイアウトを担う紙面編集部は朝刊、夕刊の紙面を考える際、自社と共同双方のメモを読み込み、どの原稿を選び、どんな扱いにするかを決めます。

少し脱線しますが、そこが新聞社(特に地方紙)の編集フロアだとすぐに分かるものがあります。共同通信のアナウンスです。
朝から未明まで共同通信とつながる回線から配信内容を伝える声が流れます。

加盟社側で音量が調整できるようですが、神戸新聞の場合、オンライン取材の相手から「喫茶店におられますか?」と尋ねられるほどの大きさで流しています。

独特のメロディーが流れることから「ピーコ」と呼んでいます。
例えば、こんな感じです。

「♫ピーコ、ピーコ、ピコ♪ 共同通信から記事送信のお知らせです。ウクライナのゼレンスキー大統領が―。♪ピー、ヒョロッ♫」

大ニュースになると、「キンコンカン」と鐘の音が流れ、フロアにいる全員が作業を中断し、耳を澄ませます。

フロアにアナウンスが流れるだけではありません。
紙面編集部のデスクは毎日のように共同側に電話し、配信記事に対する問い合わせや依頼を繰り返しています。

「もっと配信時間を早めてもらえませんか」
「○○という見出しを取りたいんですが、その理解で間違いないですか」
「もう少しコンパクトな表に差し替えることは可能ですか」

会話は丁寧語ですが、締め切り間際のやりとりは声や言い方も荒っぽくなります。

現場の記者たちにとっても共同通信は身近な存在です。
国内各地に取材拠点があり、神戸支局は神戸新聞と同じビルに入っています。

神戸支局の記者は、兵庫県庁や神戸市役所、兵庫県警などを担当し、取材ではライバル関係にあります。

共同さんに「抜かれる」ことがあり、自分の担当分野でありながら配信記事を使わざるをえないという経験を何度もしたことがあります。

紙面づくりに不可欠な原稿の配信を受けながら、現場では毎日競い合っている。そんな不思議な関係です。

来社されたOさんも、神戸支局に勤務したことがあり、兵庫県警担当として「うっとこ」メンバーとしのぎを削っていた時期もありました。
ちなみにOさんも播州(北播磨)出身。大阪支社では長く選挙を担当され、国政選挙の際には近畿や全国の情勢について播州人3号も大変お世話になっています。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

Oさんと一緒に来られたのは、大阪出身のYさんです。
1985年生まれ。聞けば、ほぼ1人でnoteの投稿を切り盛りしているそうです。

共同通信大阪支社のOさん(左)とYさん=神戸新聞社

「全国の新聞やテレビが配信記事を使っているのに、実際に読んでいる人らの反応がなかなかつかめない」
noteを始めた理由について、そんなふうにうかがいました。

「うっとこ」側からは、なぜ過去記事に絞った投稿をするのかや、引用記事中の署名を外し、ニックネームで投稿していることなどについて説明しました。同時期に始めた音声コンテンツ「めっちゃ兵庫」やメルマガ「ええやん兵庫」もPRしました。

ご覧になれば分かる通り、スタイルは少々違いますが、「読んだ人の反応を知りたい」という思いは同じです。
そのために紙面読者以外が多い(とみられる)noteの世界でどう読まれるかを試してみたいという狙いも一致していました。

noteに関わる記者はまだまだ少数で、「孤独な投稿作業」などについて盛り上がりましたが、とりわけ若手記者を巻き込む工夫などでは共同さんからヒントをもらうことができました。

来社の目的は、加盟社(神戸新聞)のnote担当への取材とともに、その内容を投稿することと聞きました。それなら「うっとこ兵庫」でもぜひ紹介させてほしいとお願いし、今回、このコラボが実現しました。

当日のやりとりの詳細は共同さんの投稿にあります。
さすがは通信社。コンパクトにまとまってます。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

noteの投稿を始める地方紙が増えています。
そのほとんどが共同通信の加盟社です。
近くでは京都新聞さんや中国新聞さんがそうです。

中国さんは若者をターゲットに、若手記者が手がけた投稿が目を引きます。

京都さんは整理部門に関する投稿や、記者の本紹介なども充実しています。

地方紙は発行するエリアでしか手に入りませんが、noteの投稿ならどこでだって読めます。そしてほとんどが無料です。
各社の投稿を読むと、どことなく社の雰囲気が出ているようにも感じます。

どんな「中の人」たちが関わっているのか―。共同さんの加盟社訪問の続編「配信」を楽しみにしています。

<播州人3号>
1997年入社。この投稿を書きながら「原稿」と「記事」の違いが分からなくなりました。近くの同僚に尋ねると「原稿は記事になる前のもの。記事は商品になった原稿」ときっぱり。「共同の『配信記事』という表現もあるし、『共同原稿』という使い方もしてへん?」と播州人3号。「う~ん」と周りの同僚たち。さらに「記者がデスクに原稿を出す『出稿』と、デスクが紙面編集部に渡す『出稿』の違いは?」「『写真』と『画像』の使い分けは?」。どんどん疑問が広がりました。毎日のように使っている言葉ですが、かなり曖昧だったことが判明しました。

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