見出し画像

【広報紙ながた3月号+α】地域のためにがむしゃらに~ありのままの自然を守り続ける

2023年度神戸SDGs奨励賞を受賞された、獅子ヶ池を美しくする会。
不法投棄により荒廃していた獅子ヶ池は、この獅子ヶ池を美しくする会の皆さんの活動によって、今では地域の方々の憩いの場と生まれ変わりました。
今回お話を聞いた獅子ヶ池を美しくする会の会長である竹内さん、事務局長である礒部さん、次年度会長予定である瀬戸さんは口を揃えてこう言います。

「獅子ヶ池は本当に素晴らしいところ、神戸市の貴重な財産である。」

獅子ヶ池の良さを肌で感じ、この貴重な財産を守り続けてきたお三方に、獅子ヶ池を美しくする会の活動についてお話を伺いました。

事務局長 礒部さん(左)、会長 竹内さん(中央)、次年度会長予定 瀬戸さん(右)

未来につながる活動を地域と共に

―記者―
皆さんが獅子ヶ池を美しくする会で活動を始めようと思ったきっかけを教えていただけますか。

―竹内さんー
私は獅子ヶ池を美しくする会ができる前、別の団体で会長をやっていました。その団体では活動として、まず阪神淡路大震災の際に学校で炊き出しを行い、その後丸山駅周辺の苅藻川の清掃を行いました。
丸山駅周辺の清掃がある程度完了した後に、次は獅子ヶ池を綺麗にしようとなったのがきっかけです。

獅子ヶ池は、私の娘が小学生の時にキャンプを行ったり、大学生が活動を行ったりと、もともと地域の人々に広く利用される場所でした。
しかし、獅子ヶ池を管理されていた方が亡くなり、後を引き継ぐ人がいなかったため、産業廃棄物などが捨てられるようになり荒れ果ててしまいました。
私は先ほどお話しした別の団体で、獅子ヶ池をきれいにしようとしていたこともあり、10~15年前に自治会の中で獅子ヶ池の管理を任されるようになりました。それから現在まで獅子ヶ池を美しくする会の会長として、がむしゃらに頑張ってきました。

―瀬戸さんー
私は現在シルバーカレッジに通っており、地域交流会でボランティア活動を行っています。
始めはそのボランティア活動で苅藻川の清掃活動に参加していました。その後自治会に入り、活動の一環として獅子ヶ池を美しくする会の活動に参加したことがきっかけです。

私自身、現役で仕事をしていた際には、ボランティアに対して関心がありませんでした。しかしシルバーカレッジに通う中で、ボランティアについて考えるようになりました。
すると、自身のボランティアに対する考え方が変わり、シルバーカレッジのモットーでもある「再び学んで他のために」を実践しようと思いました。苅藻川の活動をみても、参加者の皆さんはとても真面目に活動に取り組んでおられます。
私自身も高齢者になって、後に続く人に財産を引き継ぐ必要があると考えており、そのために汗水たらして働くことが自分の健康のためでもあり、引き継ぐ人のためにもなると思い活動を行っています。

―礒部さんー
獅子ヶ池は40~50年前までは大池と呼ばれていて、そういった大きな池があるのは知っていましたが、実際に行く機会はありませんでした。
私は10年前に丸山地区住民自治協議会の役員になり、5、6年前から獅子ヶ池の活動に参加するようになったのがきっかけです。

獅子ヶ池に携わってみて、獅子ヶ池は本当にいいところだと実感しています。神戸にため池はたくさんありますが、きれいな水が湧き出ているような自然的な池は少なく、美しい獅子ヶ池をそのまま残していかないといけないと思っています。
獅子ヶ池では雲雀丘中学校が総合学習の授業を行っているほか、獅子ヶ池を美しくする会の定例活動も行われています。
それらの活動の際に、雲雀丘中学校の校長先生が、総合学習の授業に参加した生徒の前で「自然はそのまま何もしないと破壊される。皆の地道な保護活動を続けないと自然は守られない。」とあいさつされていました。

私はその言葉を聞いて「その通りだな。」と思いました。美しい獅子ヶ池を守っていくためには、今生息している植物や動物を守る活動を継続していくことがとても大切だと改めて思います。

―記者―
獅子ヶ池を美しくする会の活動には私も何度か参加させていただいていますが、昔は産業廃棄物が大量に廃棄されていたとは思えないほど、綺麗な場所だと感じます。獅子ヶ池をきれいにされてきた皆さんのこれまでの努力が引き継がれてきた証なんだと思います。
定例活動には多くの方が参加されていると思いますが、どのような方が参加されているのでしょうか。

―竹内さんー
獅子ヶ池周辺にお住まいの方々が多く参加されています。
今では多くの方に参加していただいていますが、活動を始めた当初は、いろんなところに一緒に活動しようと声をかけても、誰も来てくれなかったんです。
その中でも活動を継続していくことで、参加者の知り合いが来ていただけるようになり、その方がまたご自身の知り合いを連れてきてくれたりして、非常に多くの方が活動に参加していただけるようになりました。

また、獅子ヶ池を美しくする会の活動には参加していませんが、一人で獅子ヶ池を綺麗にしようと個人的に活動されている方もいます。
私は目的が同じであれば方法は人それぞれで良いと思うので、その方々に定例活動に参加してくれとは言いません。定例活動に参加していただいている方々にも、個人的に活動していただいている方にも本当に感謝しています。

―礒部さんー
今は地域の方や先ほど申し上げた中学生に加え、近くの介護施設の方なども参加していただいています。
獅子ヶ池を美しくする会で毎年作成しているカレンダーに活動日を掲載しており、それを見て参加していただいている方が多いようです。活動には会費も不要で、誰でも参加できるので、皆さんいつでもお待ちしています。

―瀬戸さんー
現在参加されている方々は、竹内さんと礒部さんが説明された通りです。
最近は企業とも連携することで、獅子ヶ池に関する活動がどんどん拡大してきていると思います。活動が広く知れ渡ることで、より多くの方々に獅子ヶ池へ関心を持っていただけるきっかけとなり、活動への参加者の増加につながっているのではないかと思います。

実際、昨年神戸電鉄が開催した100件ほどのハイキングの中で、獅子ヶ池を通るコースの参加者が一番多く、約235人だったと聞いています。このような獅子ヶ池と出合うきっかけ作りを増やしていき、新しく活動に参加する方が増えてくれれば嬉しいですね。

獅子ヶ池の周囲に咲く、桜とコバノミツバツツジ
雲雀丘中学生が除草し片づけている様子

原動力は「誰かのため」

―記者―
獅子ヶ池を美しくする会以外に、個人的に活動されている方がいることに驚きました。そういった個人の方から、学生、企業まで本当にたくさんの方々が獅子ヶ池に関わり、日々活動されているおかげで、美しい獅子ヶ池が守られているのですね。
活動への参加者が増加しているということですが、何かしらやりがいを持って、活動を行う方々も多いと思います。皆さんにとっての活動に対するやりがいは何でしょうか。

―瀬戸さんー
やりがいが何かは難しいですね。
しかし、地元の人や地元以外の獅子ヶ池に関係する方の役に立ちたいという思いはずっと持っています。その中で参加者が増えていることは非常に嬉しいですし、活動が広がっている証拠でもあると思います。
後は最初に礒部さんが仰っていましたが、これを継続していくことが大事ですね。

―礒部さんー
ほんとに継続が大事だと思います。
獅子ヶ池は訪れると落ち着きを与えてくれますし、自然のオアシスです。池の周囲は静かで、音が聞こえるのは鳥の鳴き声ぐらいです。
やりがいというか、なかなかこういう場所はないと思うので、今後も守り続けていきたいという思いで活動している感じですね。

―竹内さんー
私自身もやりがいが何かと言われると難しいですが、私は獅子ヶ池に限らず、丸山地区を良くするためにと思ってこれまで頑張ってきました。
私は丸山地区に来れて本当に嬉しく思いますし、丸山地区のおかげで娘も元気に育ったと思っています。そういう意味で丸山地区には恩があるんです。
その恩を返す意味でも、活動が継続できるように次の代を育てないといけませんが、その点が今の課題かなと感じています。

次の世代を見つけるだけでなく、育てるところまでやらないと活動は続かないと思います。そのためには継続して活動に参加していただく方を少しでも増やす必要があるため、参加者が継続して参加しようと思う何かを考えないといけません。

その何かについて、私は参加者が人のために活動を行っていると実感できるようにしたいと考えています。人間の行動のもとには意義が必要で、自身の行動が人のためになっていると実感できることが、継続した行動を促すには大事だと思いますので。

アカミミガメ防除活動の様子

活動自体も持続可能なものへ

―記者―
皆さん「人の役に立ちたい」「丸山地区や獅子ヶ池を守りたい」という強い意志を持って、活動をされているのですね。
これまで活動を継続されてきて、今の獅子ヶ池を作ってこられたと思いますが、今後の獅子ヶ池の理想像はあったりしますか。

―礒部さんー
獅子ヶ池は周囲のどこからも見えない池ですが、自然がいっぱい残っています。季節の昆虫である、バッタやチョウ、トンボなどいろんな生き物がそれぞれの季節になると出てくるんです。池には魚やカメもいますし、原っぱにはいたるところでイナゴが飛んでいます。
今の町中にはこういった環境がないからこそ、獅子ヶ池のこの環境を守っていかないといけない。それは私が活動を始めた頃から変わっていませんので、新しく人工的に何かする必要はないと思います。今の自然のままを継続していきたいですね。

―瀬戸さんー
竹内さんが頑張ってこられたものを少しでも延長線上で頑張っていけたらなと思っています。私たちで手を加えるべきところには手を加え、自然を守り続けていきたいですね。

本当にありのままの自然が獅子ヶ池にはあります。水辺でイノシシが土を掘り返しているのも自然の姿です。こういったありのままの自然である掘り返した跡などは、人の手で直す必要はないんですよね。
反対に草刈りなどは、獅子ヶ池を訪れる方々のためにも、ある程度整備する必要があると思うので積極的に行っています。ただ自然豊かなだけあって、夏の草刈りはとても大変ですね。

また中学生の活動への参加も継続していただきたいですね。清掃を習慣化してもらうことで、大人になっても自身の住む地域や身の回りをきれいにしようとする心を育めると思いますし。

―竹内さんー
私も自然豊かな獅子ヶ池を維持していきたいと思っています。
私は以前に腰を痛めてしまってからは、思うように活動ができていません。次年度からは瀬戸さんが会長を引き受けてくれます。これからもできる限り応援していきたいと思っていますが、新しい人が次の世代に引き継いでいくことができればいいなと思っています。

中学生の身長程の高さのある、セイタカアワダチソウの草刈りの様子

―記者―
人が手を加えないと自然は破壊されていくかもしれないが、加えすぎても人工的なものになってしまい自然が失われてしまう。そのバランスを保つことが自然を守っていくには必要なのですね。
最後に2023年度神戸SDGs奨励賞を受賞された感想についてひと言いただけますでしょうか。

―竹内さんー
本当に夢みたいな話です。ただがむしゃらに活動してきて、最後こんな賞をもらえて。それもこれもパートナーである礒部さんや役員の皆さん、活動に参加していただいた地域の皆様のおかげです。

―礒部さんー
私自身はSDGsという言葉は最近よく耳にするのですが、中身がよくわからなかったんです。ただ今回の賞を受けて関係する資料を見ると、自然環境を持続していく活動に対して評価してもらえたんだと理解できました。
また、震災後、活動を続けてこられた方々の取り組みも評価していただいたのかなと思い、今自分がこの団体にいることにとても誇りを感じています。

次はこの活動を地元の雲雀丘中学校の生徒など、次の世代に引き継いでいく必要があると思います。そういった持続可能な活動場所として獅子ヶ池はとても適していると思うので、引き続き活動を続けていきたいですね。

―瀬戸さんー
このような賞をいただけて非常に嬉しく思います。それと同時に、この賞に恥じない活動をこれからも続けていこうと思っています。

先ほど竹内さんが人間の活動の意義という話をされていたので、竹内さんとは違う視点で、私なりの獅子ヶ池を美しくする会の活動の意義を考えてみました。
私は人間が守られる場所を守っていくということが、獅子ヶ池を美しくする会の活動の意義の1つではないかと思います。
私の奥さんが阪神・淡路大震災の時に水がなく、獅子ヶ池から水を取ってきたと聞きました。
今後南海トラフ地震が確実に起こると言われている中で、もしかしたらまた獅子ヶ池の水が必要になるかもしれません。

そういった視点で見ると、先ほどの話した意義も考えられるのではないかと思いますし、より一層守り続けていく必要があると感じますね。

「2023年度神戸SDGs表彰」表彰式