シン・長田を彩るプレイヤー~ひととまちを繋ぐシェアハウス~(後編)
今回は、シェアハウスを運営する株式会社マチアケの玉井さんを取材しました。株式会社マチアケは新長田だけでなく、北区や兵庫区など複数のエリアにてシェアハウスを運営されています。
後編では、シェアハウスの住民が今後どのような方向に進んでいってほしいのかという玉井さんの想いについて伺います!
コミュニティスペース進化論
―記者―
シェアハウスを運営されるにあたって、やりがいを感じるときはどんなときですか?
―玉井さん―
新しい業界を作るっていうことは、楽しいことなんですよ。
例えば、100年前からあるものだったら、ルールが既にがっちり決まっていてその枠の中でしかできないけど、シェアハウスはまだまだ決まってないことが多い。
自分でこうじゃないかなって仮説を作れることもあるし、そういうのがやっぱ楽しいです。どうせ作るならいいものにしたいって思いがあって。
会社なんで利益を一定程度維持することは必要ではあるんですけども、費用を支出するアクションが次の入居にも繋がるので、やっぱり楽しいしやりがいがありますね。
―記者―
なるほど。
シェアハウスにも玉井さんのように何か志をもった方が入居されることが多いですか?
―玉井さん―
そうですね。
海外の方が入居することもあるんですけど、志を持っている方が多くて。
ある意味、日本っていう言語が通じない国にわざわざ来る方を僕はチャレンジャーとして敬意を表しているんです。
そういうチャレンジをするような人達ってパワーがある人が多いので、そういう人達に何でチャレンジしたのかって聞いたら、大体すぐに志の話になります。
―記者―
そのような方たちと生活していたら触発されて私も何かやりたいことができそうです(笑)
―玉井さん―
そうですね。
明らかにそういう雰囲気になっているなっていうハウスはありましたし、そういう時期もありましたね。
そこも難しくて、やっぱり仲良くならないとそういう雰囲気にならないんですよ。
―記者―
シェアハウスによって雰囲気が異なるんですね。
―玉井さん―
コミュニティスペースって僕の中で進化論があるんです。
僕ね、最近思いついたシェアハウス0.0、1.0、2.0、3.0っていうのがあって。
1番管理がずさんなのが0.0で、それぞれがルールとかも知らないで、自分勝手に過ごすと。
次が1.0でお互いのことを知らないけども、ルールのもとではちゃんと過ごしてますよっていうので、次の2.0がお互いのことを知って困り事があれば互いに助け合いますよっていう状態。
最後に、3.0は共感し合って自然と相手を応援し合って、コミュニティの外の困りごとについても解決に向かって動いていると。
この3.0の状態のハウスを増やしていけば、おそらく事業は拡大するし、社会的意義もあると思っています。
だから3.0の状態をどういう風に増やしていくのかっていうのが今のこの事業の1番の課題ですね。
―記者―
新長田はなんとなく3.0の方が割と多いっていう印象ですね。
―玉井さん―
そうですね。
新長田のいいところは、3.0が多いところ。困っている人に積極的に声をかける文化があります。一方で長田区は多分、長田区に住んで長田区で働く人が多いんですよ。
例えば、僕は灘区に住んでるんですけど灘は灘区以外で働いている人が多いんで、外からの灘についても結構見る人が多くて。
その分、区の中での繋がりは薄いんですけど、一方で満遍なく他地域とつながりを持っているイメージはあるんです。
-記者―
長田への想いをもう少し深堀してもよろしいでしょうか?
-玉井さん-
この新長田にあるMarcheっていうシェアハウスは確か5、6個目に運営を開始したシェアハウスなんですけど、他の所でこれだけ地域と関わり合いを持てたことはなかったんですね。
このシェアハウスに関心を持っていただいた方々がいて、紹介してくださった方がいて。
それきっかけで入居が決まったこともあったりして。
そういう場所ではあるので、やっぱそこに対しては自分自身が、次そうやって来られてきた方に対して恩返ししていかなきゃいけないなって思ってます。
シェアハウスを訪れる理由へ
―記者―
ありがとうございます。
この場所で始めたのも、たまたまここが空いていたからですか?
-玉井さん-
世の中には、もうシェアハウスにしか向いていないみたいな物件があるんです。
例えば、このMarcheは元々助産院で助産用に部屋が区切られてて、シェアハウスにちょうど良かったんです。
そういうシェアハウスにしかできないよなっていう物件が出てくることがあるんですけど、シェアハウスってどの物件でもできるというわけではなくて。
-記者―
そういうシェアハウスに向いてる空き家を探すのもご自身でされてるんですか?
-玉井さん-
そうですね。
インターネットで色々見て、これ向いてるなっていうのを買い付けてるっていう感じですね。
-記者―
そういう嗅覚みたいなものって養われていくものですか?
-玉井さん-
そりゃそうです(笑)
だって、ほとんどの物件が自分で設計図も書いたりとかしてるので。
それで、この物件に対して住民がこの数だと少ないなっていうのも分かるようになったんですけど、それってわかる人はそんなにいないと思うんですよ。
1、2軒やってるだけじゃ分からないし、やっぱ10何軒やってるから分かるんだと思います。
―玉井さん―
これからやるとしたら、わざわざ神戸に来る理由になるシェアハウスを作りたくて。
他の地域には無いからここに来たんだよみたいな。
例えば、今は猫が飼えるシェアハウスをやってるんですけど、あれも他に猫を飼えるところがないから、京都からわざわざ入居者が来たんですよね。
そういう、わざわざこっちに来ないと無いみたいなのを作っていくことが今すごく大事だなと思ってて。
今は、本格的な防音室があるシェアハウスを計画してるんですけど。
そういうので、わざわざ外から人が来るっていう形にしていきたいなと思いますね。
きっかけの種類はまるで百貨店
-記者―
ホームページを見ていてすごい素敵だなって思ったのが、「きっかけの種類はまるで百貨店」っていうキャッチフレーズ。
-玉井さん-
これ、めっちゃ考えたんですよ。
きっかけっていうところだと、いい人間関係イコールきっかけがあると思ってて。
でも、きっかけって言っても色々なのがあって。
面白いので言えば、元フランス軍の軍人で身長が196センチ、体重が100キロくらいある方が入居されてたことがあったんです。
ある時、ちょっと他の入居者の方がトラブルを起こしちゃって、出て行ってもらわないといけなかったんですね。
そのときに怖かったから元フランス軍の彼に一緒に来てもらいました。
-記者―
なかなかないですね、フランス軍の方と知り合うことも。
-玉井さん-
そうなんですよ。だから、面白いですよ。
また、海外の方は自由に生きてる方が多いので。
こんな生き方もできるんだみたいな、幅が広がりますね。
住民が自ら行動するシェアハウスへ
-記者―
突き詰めて、シェアハウス3.0が今後増えていくといいですよね。
-玉井さん-
そうなんですよ。それを増やしていければもっといいなと思って。
新長田はそのモデルですよね。
ここ(Marche)に住んでる子が、地域で英会話教室や喫茶店を始めたりしてて、それは本当に良かったなと思って。
―記者―
へえ!それは運営してる側からすると嬉しいですね。
―玉井さん―
実際そうやって活動してる子たちは住民に対してもすごくいい接し方をしてるので。
そんな方が、増えていったらいいなと思って。
やっぱり、オーナーが地域と地域の課題と住民をつなげていくっていう姿勢でいることが大事だなと思ってます。
オーナー自身が解決するのはもちろんなんですけど、それをしたら僕の時間がなくなっちゃうので、住民が地域と関わって地域の課題を解決していくみたいな。
あと、今はシェアハウスとして雇用を作りたくて。住民の方々が働けるビジネスみたいなのができたら、 もっとそのシェアハウスとしての魅力も上がるし。
―記者―
住民の方が自ら行動していくかたちですね。
―玉井さん―
はい。常に10か国くらいの入居者がいるので、その環境を生かして何か地域のために、世の中のためにできたらいいなと思って。
それが今後、新長田なりこの辺でできて、そのモデルが全国のシェアハウスにも広がっていったらいいなと思ってます。
ある意味、シェアハウスを通じて自分が面白いなって思うことをやってるんですよね。
-記者―
いいですね。楽しそうです。
本日は楽しいお話をたくさん聞かせていただいてありがとうございました!
後編では、シェアハウスを運営する立場として玉井さんにシェアハウスが今後どのように広がっていってほしいかという想いについて伺いました。
お話を聞いていると、株式会社マチアケの運営しているシェアハウスはただ暮らす場所というだけでなく、人とのつながりを与えてくれる温かい場所だと感じました。
そんな株式会社マチアケが今後どのようなシェアハウスを運営していくのか、記事を読んでいる皆様もチェックしてみてください!
編集:コゲちゃん、ノツ