【書評・要約】トヨタ公式 ダンドリの教科書
【この本を一言で説明すると】
「やり直しがなくなる」仕事の進め方を教えてくれる1冊
【このような人におすすめ】
・頼まれた仕事を仕上げたが、「イメージと違う」と言われた経験がある人
・仕事を依頼したが、イメージと違う物を提出された経験がある人
・仕事やプライベートで役立つ、無駄のない物事の進め方を学びたい人
~はじめに~
依頼通りに仕事を仕上げたつもりだったが、「イメージと違う」と言われてしまった…
この経験がある方は多いのではないでしょうか。
人の数だけ答えがあるがゆえ、他人が求めるものを認識するということは難しいことです。
この難しさが、「やり直し」を発生させます。
本書はやり直しを防ぐ仕事の進め方について、8個のポイント(さらに細分化して計48個のノウハウ)を紹介しています。
中でも特に印象に残った点を紹介していこうと思います。
キーワードは「PDCA」のP(=ダンドリ)
「PDCA」とは下記の総称です。
・PLAN:段取り(=ダンドリ)
・DO:実行
・CHECK:評価
・ACTION:改善
この4つを順にこなすことで、仕事の質が高まることが認識されています。トヨタはこの中でもP(ダンドリ)を最重要視しています。
なぜかというと、ダンドリを適切に行うことでその後のDCAが正確かつ速やかに進み、やり直しも減るからです。
本書の8ポイントのうち、5ポイントが「ダンドリ」に関する内容です。
このことからも、トヨタがいかにダンドリを重視しているかがわかるかと思います。
本書にならって、下記の順で進め方のコツを紹介していきます。
【1~5】PLAN「ダンドリ」
【6】=DO「実行」
【7】=CHECK「評価」
【8】=ACTION「改善」
【1】仕事の目的・目標(到達レベル)を明確にする。
仕事の「目的」を認識した上で、「目標」を設定することが大切です。
ここで、目的・目標が何を指すか確認しておきます。
目的:最終的に目指す方向
例)お客様に安くて良い製品を提供したい。(長期的かつ抽象的)
目標:目的の前段階にある地点
例)来月の製造コストを今月より3%削減する。(短期的かつ具体的)
目的と目標が全員に正しく認識されていない場合、目標に近づかない作業を延々と繰り返すことになりかねません。
【目的、目標を明確にするコツ】
・仕事の背景と現状を理解する。
→背景を正しく理解した上で、現状と目的(ゴール)のギャップを把握することが重要です。
・制約条件(品質、費用、納期など)を数字で認識した上で目標を考える。
→仕事は何でも自由にやってよいわけではありません。自分の力では変えられない要素を明確にし、可能な範囲で進めることを理解しましょう。
・参考になる前例を見つける。
→前例がある場合は遠慮なく確認し、知見を得た上で取り組んだほうが得策です。
【2】仕事の最終的なアウトプットを明確にする
結論から言うと、やり直しをしてしまう最大の原因は仕事の最終的なアウトプットを明確にしていないからです。
アウトプット:目標を達成するための手段や仕組みなど
例)製造費を下げるための新たな手順、仕組み、物など
目標を達成するために用意した手順や仕組みが的を得ていなければ、その時点でやり直しが発生してしまいます。
【仕事の最終的なアウトプットを明確にするためのコツ】
・依頼者が具体的なアウトプットイメージを持っている場合は担当者に共有する。
→あえて共有せず、「失敗から学ばせる」という人もいますが、革新的な挑戦でない限り、同じ失敗をさせる時間は無駄だとトヨタは認識しています。
・アウトプットイメージが存在しない場合は綿密な話し合いを行う。
→思い浮かんだイメージは図にして共有することが重要です。
・場合によっては複数の案を考える。
→最初の案が最適解とは限らないため、柔軟な対応ができる準備をしましょう。
【3】仕事の手順を明確にする。
無計画に仕事を進めることは危険です。理にかなった手順を明確にすることでやり直しを防ぐことができます。
【仕事の手順を明確にするコツ】
・ゴールから手順とそのタイミングを考える。
→ゴールから逆算し、必要な手順をリストアップしてください。各手順の所要時間を考慮し、実施するタイミングを決めましょう。
・関わる人物を明確にしておく。
→巻き込まなければならない人物は確実に押さえておきましょう。
・自分たちが行動できるレベルまで手順を細分化する。
→速やかに行動できる内容にし、手順に落とし込みます。
【4】要所要所で「これでよし」と判断できる基準を明確にする。
全手順が完了して初めて評価ができるような仕事は、膨大な労力を消費してしまいます。
計画が甘いと各段階で「本当にこれで良いのか」と判断に迷い、無駄な情報収集をしてしまいかねません。
【要所要所の判断基準を明確にするコツ】
・前例を参考にしたり、失敗した際の影響度が大きい箇所から優先したりして考える。
→判断基準は十分なリスクマネジメントに基づく合理的なものでなければなりません。参考にできる前例は大いに利用しましょう。
・誰が見ても同じ認識をする判断基準を定める。
→例えば会議室の予約をする場合、「大勢が座れる部屋」ではなく「30名が座れる部屋」など、誰が見ても同じ認識が持てる基準を設けることが重要です。
【5】各手順で必要なものを明確にする。
仕事の手順を洗い出した後、各手順で何が必要か明確にすることが重要です。
【必要なものを明確にするコツ】
・情報、道具、能力、注意点、理由などを挙げて考える。
・必要なものがイメージできない場合は、関係者を巻き込んで検討する。
→仕事を進める場面を細かく思い描いた上で、必要なものを明確にしていくことが重要です。
【6】要所要所で「これでよし」と自信を持って仕事を進める。
このポイントがPDCAのDに該当します。
大事なことは、前項1~5に従って決めた手順を守ることです。
考え抜かれた手順を確認しながら実行していくことで、「こんなはずではなかった」という事態を防ぐことができます。
逆に言うと、自信を持って実行できるレベルまで準備をしておかなければならないということです。
【7】仕事の結果と進め方を振り返る。
このポイントがPDCAのCに該当します。
設定した目的・目標と結果のギャップを確認します。自分だけでなく、次工程の人やお客様にギャップを確認することも大事です。
また、結果だけでなく仕事の進め方も振り返るようにしましょう。
失敗した点があれば、それを振り返ることが再発防止や改善に繋がります。
【8】仕事で得られた知見を伝承する。
仕事から得られた知見は、余すことなく伝承しましょう。
自分自身の価値を下げてしまうと考え、「仕事を人に教えない」人もいるかもしれません。トヨタではこれを禁止する…というより、もはや「伝承するのが常識」となっているそうです。
他人が得た知見をいつでも活用できるよう、共有のサーバーやルールを設けることが重要だと本書では述べられています。
若手社員に失敗を通じて学ばせるという考えもありますが、過去に先輩がしてきた失敗は仕事に着手する前に学ぶほうが懸命です。
(一方、新たな領域へのチャレンジであれば失敗は人財育成につながるでしょう。)
しなくていい失敗は防ぐ。そして振り返りで明確になった問題点やその改善策などを活かしていくことで、仕事の質は大きく向上していきます。
~最後に~
興味が湧いた方は実際に本書を読んでみることを強くおすすめします。
そして、自分に合いそうなものを一つでも取り入れてください。
イチローさんもおっしゃっていたように、「小さなことを積み重ねることが、とんでもない所へたどり着く唯一の道」であるということを、本書からも認識できるはずです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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