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うしろ姿の姉 【30秒で読める怪談】

友人のT君が中学生の時の話。
T君にはひとつ年上のお姉さんがいた。

両親は共働きで、ふたりとも帰宅するのは19:00過ぎ。
T君とお姉さんはいわゆる鍵っ子だった。

ある日、T君が学校から帰ってくるといつも通り誰もいない。
姉は部活で忙しく、たいていT君の方が早く帰るのだ。
カバンを居間のソファに投げ置いたT君は、自分の部屋で漫画でも読もうと二階へ急いだ。

階段を上ると細い廊下があり、扉がふたつ並んでいる。
T君の部屋は奥側。手前がお姉さん。
部屋の前を通るときドアが少し開いているのに気が付いた。
気になって隙間から覗いてみると珍しく姉がいる。
「あれ?玄関に靴あったっけ?」とT君は思った。

お姉さんはベッドの上に横になり、壁の方を向いて寝ている。
見慣れた髪型に見慣れた部屋着。
ジャージ姿でないという事は今日は部活を休んだのだろう。
体調が悪いのかもしれない、と思ったT君は声をかけずに自室に入った。

漫画を何冊か読み、時計を見ると1時間ほど経過している。
ふいに一階からガチャっと玄関扉が開く音が聞こえた。
父や母が帰ってくるにはまだ早い。
続いて「ただいまー」と元気な姉の声。

あれっ?と思ったT君は急いで一階に下りる。
「学校帰ってからどこか出かけたの?」
「え?今学校から帰ったところだよ」
T君は二階に上がり姉の部屋をおそるおそる覗き込んだ。

ベッドには誰もいなかった。

両親にも事情を話したが、見間違いだろうと一笑に付され、この一件は落着してしまった。
しかし、あの時確かに誰かいた。
そして、うしろ姿は紛れもなく姉のものだった。

それ以来、「姉のようなもの」は現れていない。
しかしT君は今でも時々考えてしまうそうだ。
もしあの時、あれに声をかけていたらどうなっていたのだろうかと。





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