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燈火、目前に迫る 崎山蒼志

私の音楽や物の見方に大きな影響を与えた人の一人が崎山蒼志だ。私が中学生の頃、突如として、五月雨が世間に発見された。高校生フォークソンググランプリへの出場だ。私もそのタイミングで、崎山くんを知った。その動画を再生するまでは、同年代のフォークソングということもあり、正直それほど期待してはいなかった。しかし、表現しがたいような感情を形容した歌詞や、それに調和するメロディーセンスは、当時中学生の私に突き刺さったのだ。

それからというもの、私が闘病で辛かった時期、様々な不安や葛藤があった時期、いつも崎山くんの音楽があった。間違いなく、彼の音楽に私は救われていた。

そんな私も大学生になり、崎山くんの『燈』が世界中で大ヒット。そして、10月、3rdアルバムのリリースを記念して「3rd Album Release Tour-燈火-」が開催されることになった。この機会に、崎山くんのライブに行きたいと思い、チケットを購入した。
しかも、今回参戦する名古屋はツアーファイナルである。崎山くんの出身が浜松市なので、このチョイスなのだろう。

今回は、名古屋 CLUB QUATTROにて、ライブが行われる。今まで、カフェなどでの小規模なライブに行くことが多かったので、少し新鮮な気持ちだ。

エレベーターで、名古屋PARCOの8階につくと長蛇の列ができていた。私の整理番号は、すでに呼ばれていたようで、ドリンク代を払い会場へ入る。たくさんの人が待機している。

ライブが始まる。ああ、ついにあの崎山くんをこの目で見るのかと、気持ちが高揚してきた。

崎山くんが登場する。感動のあまり、泣いてしまうのではないかと思っていたが、中学生の頃からずっと見てきたからか、「いつもの崎山くんだ!」という感情になった。なぜか安心感がある。

そして、アルバムの一曲目の『i 触れる SAD UFO』 からライブが始まった。崎山くん一人の弾き語りではなく、4ピースバンド編成なので、とてもエネルギッシュだ。

演奏の間に挟むMCは、中学生の頃と同じく、微笑ましい雰囲気だった。今回のツアーでギターパートとして参加した、クジラ夜の街の山本薫さんに「今日名古屋に入ったんですか??」と聞き、「それ知ってるでしょ(笑)」と突っ込みが入る。会場内に笑いを誘った。

しかし、演奏が始まると雰囲気は一変。彼にとって、ギターは武器なのだろう。『水栓』では、ステージ上を暴れまわり、崎山くんが眼鏡を外すと会場が湧いた。

『太陽よ』は今回唯一の弾き語り曲だった。これぞ崎山蒼志という弾き語りで、私も息を呑んだ。今回の名古屋 CLUB QUATTROは、KIDS'A時代にステージに応募し、出演したことがあったそうで、「楽屋がちっちゃく感じて、感慨深い」といったことを話していた。私も崎山くんの音楽を見つけて早五年。時の流れを感じる。

アンコール。崎山くんとバンドメンバーが、ツアーのグッズTシャツに着替えて再登場する。『剝れゆく季節』、『潜水』を披露した。潜水では、2022年のフジロックに出演したときのような暴れっぷりであった。

崎山君がお辞儀をして退場。会場が明るくなり、BGMが流れ出す。しかし、アンコールの拍手は続いていた。私は正直、もう終わりだろうと思っていた。しかし、崎山くんはもう一度ステージに出てきてくれたのだ。ダブルアンコールである。こんなことがあるのかと驚いた。

本当の最後の演奏。一番最初に演奏した『i 触れる SAD UFO』をもう一度演奏してくれた。

私にとって、いろいろな不安や葛藤を乗り越えられたのは、崎山くんの音楽に救われていたからと言っても過言ではない。今回こうして、ツアーファイナルに参戦することができ、自分の中でなにか一つ区切りがついたような気持ちになった。明日からも前向きな気持ちで生きていこうと、とても充実感あふれる気持ちで帰路についた。

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