ショートストーリー クロカンブッシュ

山のように積まれたシュークリーム。
ピッタリとシュークリーム同士をくっつけているカラメルは、シューに歯ごたえをくれる。
シュワリと音もなく消えるシューに対して、カリッと音だけを残して甘く溶けるカラメルは、混じり合うとさらに美味になる。

愛しい子供達を思いながら、シュークリームを積み上げる。
カラメルに着けては、シュー同士をくっつける。
30センチは積み上げたけれど、まだまだだ。

ウェディングケーキとは言わなくとも、高く高く積み上げたい。
その分、幸せも大きくなるというものだ。

マンションの住民が集まって、クリスマスパーティー。
よく見るギスギスした争いもなく、マンションに住めば皆家族といったアットホームな環境だ。

子供がイタズラをすれば、近くの大人が叱る。
どちらかと言えば田舎の風習に近い雰囲気だ。

マンションに住む子供たちは、1階から15階合わせて十人。
多いのか少ないのか分からないが、皆かわいい子供たち。

フランスでは、キャベツはかわいいの代名詞。
子どもだってキャベツ畑から産まれると言われるくらい。

シューは、そのキャベツを表しているのだから、可愛い子供たちへのプレゼントにクロカンブッシュはピッタリだ。
マンション近くの公園から、私のとびきり可愛いキャベツの声が聞こえた。

鬼ごっこでもしているのだろう。
笑いながら走っているのが声だけで分かる。
マンションの子達の中でも一番年齢が小さい私のキャベツちゃんは、年上の子達に可愛がられる。

子育て疲れをしそうだった私にとって、公園にいけば相手をしてくれる彼らは、天使のようだった。
天使なキャベツ達に喜んで貰えるように、せっせとシューを積む。

お礼をこめて、彼らの幸せを願って。
シュークリームも50センチほど積み終わり、終盤に差し掛かる。
手作りのプチシューは、手元には残りわずか。
山になっているシュークリームは、ところどころ歪な形のものも混じっている。

シュークリームはどれも似ているけれど、自分が担当したシューがどれかなんとなく分かった。
手元に残るシュークリームの中にも一つ私の作ったものが、山に加わるのを待っていた。

どれだけ量があったって、自分の可愛い子はわかるものだな。
残りのシューをくっつけて、カラメルを表面に塗りつけた。

窓辺から走り回る可愛い子たちを見やると、今度はかくれんぼをしていた。
どの子がどこに隠れているのか。
上からだと、全員すぐに見つけられた。

だけど一番最初に見つけたのは、やはり我が子だった。
分かりやすい場所で隠れている姿は可愛らしく、年上の子たちにもその必死さが伝わっているみたいだった。

窓から子ども達を呼ぶと皆、素直にパーティー会場へ戻っていった。
歓喜の声を聞くために、私はパーティー会場へクロカンブッシュを運ぶ。

想像以上の歓声は、積み重なった肩こりも和らげた。

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