ショートストーリー ざるうどん

せいろの上でツルツルと麺が光る。
はやる気持ちを抑えて、ネギと生姜、胡麻をツユに入れる。
気持ちとは裏腹に、回転式のごますり容器からは少しずつしか胡麻は降ってこない。
焦って回しても、飛び散る量が増えるだけだ。
ツバを飲み込み、気持ちをなだめてひたすらに胡麻をする。

毎日車を走らせて、町のゴミを集める。
担当する町を一回りした達成感は、空腹感と疲労感に比例する。
そんな綺麗になった町のうどん屋で昼食にするのが、僕と先輩のルーティン。
綺麗になった町での、真っ白なうどんは格別。

メニューに迷いつつ、今日はざるうどんにした。
暑くなってきた時の定番。
喉越しの良い麺を、胡麻の風味と生姜の刺激で頂けば食欲のアクセルは全開になる。
先輩と二人向かい合い、店の高い所に設置されたテレビの音も聞こえなくなり、二人分のうどんを啜る音だけしか僕には聞こえなくなる。

麺をすくって、ツユに半分つけ、啜る。
これを繰り返す。
意識がうどんにいっているだけで集中している自覚はない。
ただ、こんもりと山になった二玉分のうどんも、あっという間に消えている。

名残り惜しさにちくわの天ぷらで〆る。
そうすれば計ったわけではないけど、三玉分を食べる先輩も同じタイミングで食べ終わる。
しばらく、一緒にテレビを見上げたら一緒に回収車に乗り込む。

回収車の中では、見ていたテレビの内容かうどん屋の話、時々仕事の話。
今日は、うどんにかける胡麻をかける量について、とことん話あったりした。

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