ショートストーリー イワシの梅煮

甘酸っぱいのが恋なのか。

コッテリした醤油ダレに梅の酸味がピッタリ合っている。
生姜が嫉妬したように、刺激してくるのも良し。
そう考えたら、恋というのも分かる気がするが本当にそうなのか。

海で泳いでいたイワシと、山で育ち壺の中で眠りについた梅。
長い年月を経て食べ頃となった時には、梅はお婆ちゃんのようにシワシワ。
これが恋だというのなら、梅とイワシは時空を超えた大恋愛ということになる。

それも面白いかもしれない。
骨まで柔らかなイワシを噛じる。
ご飯をかきこんで、ポッカリ空いたご飯茶碗を眺める。

茶碗にご飯を山盛りおかわりして、仕切り直す。
一口噛んで、ご飯を頬張る。
やっぱり甘酸っぱいは、恋ではない。
甘酸っぱいは、ご飯をも制する。
ただの正義だ。
正義の前では、眩しさのあまり、人々はただひれ伏すだけ。

暗い海で死にものぐるいで泳いでいたイワシが、梅と生姜、様々な調味料によって、光輝く正義となったのだ。
「良かったな」
一人納得し、また茶碗にご飯を盛り付けた。

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