ショートストーリー 鯖の塩焼き定食

湯気のたつ白いご飯は山盛り。
ワカメが悠々と泳ぐ具の少ない私好みの味噌汁。
ちょっと多めに盛り付けられたたくあんが、金に光る。
鯖の焦げ目は油の豊富さをものがたり、ふっくらした身は食べ応えがありそうだ。
付け合せの大葉の香りと大根おろし、トマトは爽やか。
手を合わせて、鯖の身をほぐす。

塩と油が舌の上で溶ける感覚をじんわりと楽しむ。
子供たちの笑い声に心が和み、若者の弾む会話も楽しい味になる。
同年代達は食が細くなったとやたら騒ぐが、この場所のおかげで私は変わらずよく食べられる。

妻が旅立ち、独りになったとはいえ、暖かな家族風景が近くにあるファミレスは寂しさを紛らわせてくれる。

食事が進むに連れ、芯まで心まで元気になる。
手を合わせ水を取りに行くと、私の杖を見た小さな女の子が代わりに汲んでくれた。
「ありがとう」
そう言って受け取ると、笑顔をみせてくれた。
こういうことがあるから、ここにくるのはやめられない。

沢山の記事の中から読んで頂いて光栄に思います! 資金は作家活動のための勉強(本など資料集め)の源とさせて頂きます。