百物語 第五十六夜

友達の家の犬が苦手です。

一見何のかわりもないただのチワワですし、病気もなく、しつけもきちんとされていて、無駄吠えもありません。

私にも恐らくなついていると思います。
私もそれまでは遊びに行く度によく可愛がったものです。最近は少し…距離をおいて接しています。

以前遊びに行った際、友人がお茶の用意をしてくれている間に、私が抱っこして撫でていました。すごくおとなしく私に撫でられていましたが、友人が部屋に戻ってきたとき、犬は顔を動かさずに目玉をぎょろりと向けて主人の方をみました。

動物は大抵黒い目の部分しか見ることがないので、白目まで見えるのも珍しいなぁと思っていました。

が、その時、白目の部分に小さくほくろのような黒いものがみえました。私はこんなところに痣かなにかかなぁ…としか思いませんでしたが、抱き上げたまま目を近づけてよく見てみると、そこにははっきりと

という漢字が見えました。

私は驚いて友人に知らせましたが、犬はうまく白目を見せてくれず、友人が見てみてもわからず、逆に私が気味悪がられることになりました。

それ以降、私はなんとなくその犬を触ることを避けてしまっています。

ただただ、眼球に刻まれたゴシック体のような「触」という字の生々しさが気味悪く印象に残っていて、こうして書いていてもむずむずとする不快感が止まりません。

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