百物語 第十五夜

女性が隣についてくれるような店でその女性と上手く話が噛み合ない時に、遊び慣れていない子供みたいで恥ずかしさはあるけれど、「ねえねえ、霊感ってある?」なんて話をしてみることがある。

これまでの会話が弾まなかった女の子に限って、心霊話には盛り上がることはよくあることだ。

ただ彼女たちの話す実体験談や友達の話は、どこかで聞いたことがある内容で、聞きながらそんなもんだよな、と思うことが多い。

それでも時々怖いか怖くないかは置いておいて、記憶に残る話をしてくれる子もいる。

明大前のガールズバーで聞いた話もそんな話のうちのひとつだ。

霊感ある?と聞いた俺に、目を輝かせてその子は「ずっと自分は霊感がないと思っていたけれど、最近初めて幽霊をみた」と興奮ぎみにこたえた。

内容はといえばとある大型施設の駐車場にあった車の運転席側に人間大のダルマが座っていたというものだった。可能性としては低いが、人間大のダルマが運転席にたまたま置かれていることもあるんじゃないのと聞いてみると、彼女は驚いて「そんなこと思いつかなかった!ただ見た瞬間に、これは幽霊だ、って感じたんだよ」と言った。

幽霊なんてそんなものなのかもしれない。

その場にいた人間が、幽霊だ、と感じてしまうかどうか。心霊体験をしたという理由はないが説得力が漂う出来事。体験談として心霊体験のリアリティを感じた話だった。

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