百物語 第九夜

私が三年ぶりに帰省したときの話です。

大学から地元を離れそのまま東京で就職した私は、新幹線で二時間程度で帰省できる距離の地元ということがあってか、連休があっても帰省しないでいました。

三年ぶりに帰省したのは従兄弟の結婚式があるからです。久しぶりに見る故郷の風景はよくもわるくも変わらなくて、東京での仕事や生活をわすれてリラックスできました。

のんびりと実家で過ごし、私はまた東京に戻りました。

その東京へと向かう新幹線の中で親から一着のメールが届きました。

「あなたが家を出て、一時間後にペロが息を引き取りました」

ペロはうちで飼っていた愛犬のことです。

後から聞いてみると、ペロは一ヶ月ほど前から体調を崩していたようです。年老いた犬だったので最初それほど気にしていなかったらしいのですが、どうにも様子がおかしいと動物病院へ連れて行ったところ心臓病だったといいます。

帰省中、わたしはペロと毎日散歩しました。それが中校生の頃からの私の家での役割だったからです。よたよた歩いているペロに老人だなあ、なんて声をかけたりしてました。それでもペロは楽しそうには歩いていたので病気ということにはまったく気づけませんでした。

何も変わっていないとおもっていたけれど、そんなことはないんだとペロのことで思うようになれました。

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