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ゴーン氏、栄光の日々と挫折【未来を生きる文章術009】

 このコラムを書いた2002年3月6日当時、日産のゴーン会長はまさに飛ぶ鳥を落とす勢い。まさか17年後にこんなことになっているなんてね。

 そしてまた、まさかぼくがそのマーチに乗っているとは。中古で安かったので即決で買ってしまい、今はマーチ・オーナーです。いや、安かっただけじゃなく、カワイイ、と思ってしまったんですよね、店頭で。それだけ、当時のデザイン力は高かったということかと。
 エモーションに訴えることが重要というマーケティング上の秘訣は、今日ではますます重いテーマになっているのではないでしょうか。

 せっかくだから、エモーショナル・マーケティングでとどめておけばよかった気もしますが、そのテーマで提供する情報が無かったので、ユーザビリティという、ウェブサイトでよく使われていた概念にずらして切り込んでいます。
 ちょっと無理やりな気はしますね。でも、ある現象を分析するときに、別の概念との共通項でつないでみるという作文術は、ありなんですよね。というか、そういう見立ては、クリエイティブでは基本です。今回は少々強引に過ぎますが、やろうとしていることは、そういうことなのです。

 かの人も、あるいはその後エモーションやユーザーフレンドリーという顧客を観る視点を忘れてしまって、社内目線だけに戻ってしまったのでしょうか?


新型マーチ発売、「ユーザーフレンドリー」で巻き返しなるか

 日産自動車の新型「マーチ」の販売が、3月5日から全国で開始されました。リストラによって収益回復を達成した同社が、販売力の向上による成長を期して投入する人気車種の全面改良モデルです。
 初代のマーチが登場したのが1982年。以後10年ごとにモデルチェンジを繰り返し、今回が3代目になります。旧型は今年1月の新車の登録台数ランキングでもトップ20以内。発売から10年になろうとしていたわけですから、根強い人気といっていいのではないでしょうか。
 といっても今回は、昨年来人気を集めているホンダの「フィット」やトヨタの「ヴィッツ」といったライバルがひしめくコンパクトカー市場に切り込むことになります。厳しい競争に日産はどう臨もうとしているのか。興味を持って発表のニュースを追いかけました。

 報道によると、カルロス・ゴーン社長は、新型マーチについて「使い勝手の良さと魅力的なデザインを追求した」とコメントしています。開発コンセプトは「ユーザーフレンドリーを追求した、おしゃれな新世代コンパクトカー」。仏ルノーとの車台共通化などコストダウンを図りつつ、おしゃれさといった顧客のエモーショナルな部分に訴えることを重視しているわけです。
 信頼性の回復が求められている同社にとって、理詰めで顧客のニーズに訴えるだけでは充分ではありません。顧客の感情を喚起し、欲求を創造することまでしないと、販売の劇的な回復は望めないでしょう。ユーザーフレンドリーを強調する背景には、そうした戦略もあることと思います。

 マーチを発表するウェブサイトは、なるほど「ユーザーフレンドリー」に作られています。
 静岡大学の黒須正明教授の提唱によると、ユーザー工学において「使い勝手(有用性)」は、わかりやすさや扱いやすさといった「ユーザビリティ」と、機能や性能といった「ユーティリティ」から成るといいます。「メカニズム」「スペック」といった機能説明を行いつつ、「運転のしやすさ」などユーザーメリットにも触れる構成に、両者への配慮を感じます。車のデザインからサイトデザインまでコンセプトが統一されており、日産がこの車にかけた「本気」を見るようです。

 もっとも、ほんとうの「ユーザーフレンドリー」はここからがスタート。実際に試乗に訪れたり、購入したユーザーとどれだけ充実した関係を築けるか。見込み客に「マーチのある生活」をいきいきと提示することができるのか。これら顧客との関係づくりには、共感を育みつつ夢を与える、高度な創造力が求められます。
「ダウン」「カット」という社内改革にかけては合格点を得た日産が、「クリエイティブ」「シンパシー」といった外へ向けての活動でも秀でているのか。「ユーザーフレンドリー」は、新型マーチの売れゆきのみならず、成長軌道を目指した次期経営計画にもかかわるコンセプトといえるのではないでしょうか。

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ゼロ年代に『日経ビジネス』系のウェブメディアに連載していた文章を、15年後に振り返りつつ、現代へのヒントを探ります。歴史が未来を作る。過去の文章に突っ込むという異色の文章指南としてもお楽しみください。

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雑文を書いたり、地域づくりに取り組んだり、そんな日々です。noteでは、ゼロ年代に『日経ビジネス』関連のウェブメディアに連載したコラムを現代の眼で振り返ります。時代の変遷に未来への目線を養う。あわせて、15年以上前の自分の文章に突っ込むという異色の文章指南・文章論でもあります。
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