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07. 生々しく、生きている 【 旅の記憶 】 5/26-28

5/26
ここにきてずっと避けていた菓子作り。
贈る人もいないし、気持ちも向かないし、長野滞在中は作らなくてもいいかなあ、なんて。だけど、夫から「お菓子作らないの?」と言われてやっぱり何だか引っかかる。自分に問うてみれば、やはり作った方がいいと思っている風。
そのことに気づいたら、後は行動するだけ。まずは足りなくなりそうなもの、必要な材料を手に入れることから始めよう。

長野県のローカルスーパーTSURUYAへ。
ここはとても楽しいスーパー。オリジナル商品がたくさんあって、それらは無添加な上に安い。オリジナル商品以外にも、全国各地で丁寧に作られているもの(有名どころだと、三河みりんとか富士酢とか)をずらりと並べていて何時間でもいられそう。ほんとスーパーって楽しい。地元にも個性的なスーパーができてくれたら嬉しいな。

帰ってきてひと息。
ハーブティーを淹れて、本を準備して、庭を眺めながらの読書時間。とてもよい天気で日差しは暑いくらいだけど、時折吹く風が心地よい。
草花がさわさわとゆれている様をみていると、すでに世界は豊かさで溢れていると気づかせてくれる。
自然のエネルギーは本当にすごいと思う。癒しや浄化、気づきも与えてくれるし、等価交換の原理を越えて様々な形でエネルギーのお裾分けもしてくれる。そんなでっかい存在であれたらかっこいいなあ、などと思う昼下がり。

5/27
よし、今日は菓子作りをしよう。まずはお掃除から。掃除をして心身を清め、久しぶりに粉に触れる。避けていたけど、やっぱり菓子作りは愉しい。そう思えて素直に嬉しい。
出来上がった菓子を庭で撮ってみる。やっぱりいいなあ、庭。
ささやかでいいから、庭や畑のある家で暮らしたい。暮らしているイメージ(妄想)はできているから、きっと近い将来そんな暮らしをしているのだろうと思う。なんの根拠もないけど、根拠のない自信とか確信の方が案外上手くいったり実現しやすい気がする。

そろそろ長野滞在の終わりが近づいてきた。明後日長野を立ち、川越へ移動する予定。あと1日と少しの時間の中でできること、やる必要があることを夫と共有する。
ゆったりまったりすることも必要だし、テキパキとやるべきことを遂行することも必要。どっちかしかないのはいつかどこかに歪みが出てくる。一点集中、一辺倒になりがちな私だからこそ、柔軟に行ったり来たりしながらバランスをとれる自分でありたいなと思う。

photo by Yutaka Kobayashi

5/28
関東で逢う人たちに贈る菓子を何種類か作る。やっぱり誰かに贈るためという目的があると気合が入る。
でも、やっぱり、人に食べてもらうのは緊張する。自分は美味しいと思っていても、人が美味しいと思うのかわからないし。気を遣って美味しいと言ってくれているだけでは?などとついつい不安に駆られてしまう。
だからこそ、アウトプットの機会はとても大切。実際にどういう反応があるのかはやってみないとわからないし、より美味しくするためのヒントをもらえるし、繊細な神経を図太くしていける可能性もある。

夕暮れ時に庭を眺める暮らしは今日で一区切り。きっといつか庭や畑がある暮らしが当たり前になっているんだろうな。どの地で暮らしているかは今のところわからないけど。

子どもの頃は、綺麗で現代的で洋風な新築に憧れていたし、物も新品の洋風のものが素敵だと思っていた。けど、いつからだろうか、経年変化で深みを増した建物や物に心惹かれるようになっているし、箒や竹のざるなど昔から作られてきた物を改めて自分も暮らしに取り入れたいと思うようになった。思春期が始まったあたりから、田舎くさい、ダサいと距離を置くようになったのだけど、私にとっては必要な通過儀礼だったんだろうなと振り返って思う。

ついつい、目を輝かせながら自分が信じた道を真っ直ぐ歩み続ける人に憧れを抱いてしまうけど、色々と寄り道をして時々五里霧中な気分になったりしながら自分の道を歩くのもまた味のある人生だと思う。もしかすると、真っ直ぐ我が道を歩いているように見える人も、時に悩み苦しみ五里霧中になることもあるのかもしれない。ないかもしれないけど。

辺りはすっかり暗くなり、キャンドルを灯して長野の暮らしを振り返る。
癒しも豊かさも感じられた日々のなかで、黒くてどろどろした感情も湧き上がってきた日々。生々しく、生きているという感覚。

ネガティブで苦しいことほど避けたいものだけど、その経験を経た後には幸せや豊かさをより深く感じられる瞬間がある。幸せになるためにあえてネガティブになるんじゃなくて、ネガティブは日々の暮らしにおける感情のゆらぎの一部として捉えればいいのだと思う。落ち込むときはしっかり落ち込んで小さく丸くなって、真ん中に戻ってきたら周りを見渡して、目に映る日常に美しさを見出す感性を取り戻せばいい。
多分それで大丈夫なんだと思う。

今回はここまで。それではまた。

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