植物図鑑は開かない

地元に帰省(今住んでいるところから車で1時間で帰れるので帰省というかはちょっと微妙なところ)した時に、去年の教え子に出会った。

その子は図書館に勉強しに行くそうだ。受験生の中の受験生。頭が上がらない。その子は「これ、捨てれなかったんであげます。」と言ってピンクの花びらを僕に渡した。

僕は花びらを持って歩きながら、そもそもなぜその子は花びらを"捨てられなかった"のかと考えた。

僕なりの答えとしては、受験生だから、と考える。"落ちる"とか"スベる"とか。そういった言葉に受験生は敏感だ。"捨てる"という言葉もそういった言葉の親戚のような気もしないではない。きっといとこぐらいの関係だ。まぁ年に数回は会うかな、ぐらいの関係。家系図を辿れば"失う"という言葉に辿り着くはずだ。

その子は受験で鉛筆を転がすような子ではないけれど、裏を返せば、ゲン担ぎしたくなるぐらい頑張っているのだろう。

そう考えていくうちに僕もその花びらを捨てられなくなった。虫とか生き物ならそれらしいところに放せば自然に帰っていくけれど、花びらはそういうわけにはいかないし。少し考えて僕はその花びらを川に流すことにした。川は未来に連れて行ってくれる気がするから。

僕は花についての知識が全くない。だから花の名前はわからないけれど花言葉は"合格"。そんな気がする。花言葉が分かればそれで十分だ。

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