タンスはタイムカプセル

小学校高学年の頃、僕らの学年ではジャージが流行った。もしかしたら流行っていたのは僕の周りだけかもしれないが、あの頃は今よりも世界が大きく見えていたのだから仕方がない。硬筆と塾とスマブラ三昧の小僧が何をスポーティーになろうとしてるんだ、と思うが、ドッジボールや鬼ごっこは真面目に取り組んでいたのでスポーティーである方が良かったのかもしれない。特にPUMAのジャージが流行っていた。どんな困難も越えていけそうな自分たちを身軽そうなあのネコ科の動物に重ねていたのかもしれない。(絶対そんなことはない。そこまで深く考えることなんかできない。)

中学生になって世界はもっと広がった。友達も増えた。部活を始めたことによって私服を着る機会はめっきり減ったが中1の僕にとってはPUMAのカッコ良さは健在だった。

そんなある日、たまたま僕の私服を見かけた友達が「私服でジャージはダサい!」と言い放った。全然意味がわからなかった。「日本の首都は東京ではない!」とか「「四季は本当は6つある!」って言われたぐらいの衝撃だった。その辺のよくわからんやつが言うならともかく、当時の僕がかなり信頼していた子が言うのだから間違いないのだろう。と思った。それからPUMAは部活終わりの移動着になった。休みの日はタンスからネコ科の鳴き声も聞こえてきたが、外に出してやることはなかった。

時は流れて現代。時代の流れか、最近は私服にジャージを着るのもアリだと言う。ジャージじゃなくトラックジャケットと言うらしい。(慣れないのでジャージと呼ぼう。)僕はadidasのジャージを好んで着ている。adidas好きのロックスターが着ていたので同じのを買った。完全に影響を受けている。何故なら僕はそもそもNIKE信者なのだから。

つい先日、中学からの友達とご飯に行くことになった。何を隠そう「ジャージはダサい!」と言ったその子だ。僕はお気に入りのadidasのジャージを着ていこうと思ったが中学生の頃を急に思い出しそっとクローゼットに戻した。adidas側も不安だったらしく3本線がいつもより細く見えた。代わりにレザージャケットを着ていくことにした。

「レザージャケットはダサい!!」

と、言われなかったことに安堵したが、向こうが大人になっている事を考えると、言わなかっただけの可能性もある。ひょっとすると、レザージャケットもダサいのかもしれない。

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