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米津玄師の天才的な”音”の使い方

ここ数日、朝起きてから寝るまで米津玄師の音楽を聞いています。

彼の奏でる音楽は何回聴いても飽きないどころか、聴くたびにに新たな発見をもたらしてくれます。
メロディ・歌詞・声質・歌唱法などその要因は多岐に亘りますが、
今回は”音”の使い方に絞って、米津玄師の曲を掘り下げていきます。

音の使い方とは?

音の使い方とはメロディや歌詞ではなく「使用されている音(狭義には楽器)」を指します。米津玄師は元々ハチという名義で初音ミクのボカロP出身であるため、楽器を使わずに作曲するDTMの出身という事になります。
DTMは楽器という制約がなくなるため、通常の作曲法では考えられないような音の使用や組み合わせを曲に取り入れることができます。
最近、DTM出身のアーティストも増えてきたのですが、中でも米津玄師はDTMの申し子と言っても良いくらい音の使い方が絶妙です。一見アンバランスで不協和音に思える音も曲のスパイスとして上手く散りばめてきます。

それでは1つ例を挙げてご説明しましょう。

Lemonと「うぇっ」

石原さとみ主演のドラマ「アンナチュラル」の主題歌で、YouTubeの再生回数が5億回を突破したモンスターソング「Lemon」を例に挙げてご説明します。
ここで彼が使用している「ありえない音」は、AメロとBメロで何度も流れる「うぇっ」という声の音です。

一体この音は何なのか?と気になった方が多いようで、YouTubeのコメント欄にも何の音だ?というコメントが散見されます。
この音について本人がラジオの対談で下記のように語っています。

なんかもう…これはホントに自分の中で重要な音であって、あるのとないのとでは全然こう…意味合いが変わってくる感じがあって自分の頭の中で。それが何故なのかって言われたら正直自分でもわかんないんですけど。ホントに重要な音だと俺は思ってますね。

この音が入る場合と入らない場合でLemonの雰囲気は大きく変わり、また米津玄師がLemonを通して伝えたかったことを表現するには不可欠な音だったということです。

このように、他のアーティストは絶対に使わないような音を楽曲に取り入れ、全体と調和させる点が米津玄師の特徴であり傑出した点です。

少し昔の曲になりますが、「アイネクライネ」という曲もご紹介します。

アイネクライネと木琴

この曲もYouTubeで2億回再生されている米津玄師の代表曲で2014年の東京メトロのキャンペーンで使用された曲でもあります。

米津玄師本人が描いた水彩画のミュージックビデオと女性の心情を繊細で優しく、どこか悲しい言葉で歌い上げた歌詞が印象的な楽曲です。
この曲も”音”に注目すると新しい景色が見えてきます。

まず一つ目はサビ前のシンセサイザーによるサイン音です。
動画の1:02くらいから鳴り始める何とも言えない音が、この曲に独特の雰囲気をもたらし、他の楽曲とは差別化された印象を与えています。

そして、更に注目していただきたいのがサビで流れる、一見場違いのような木琴?の音です。どんな音か言葉で説明するのは難しいので、ポンポンという木琴の音をイメージしながらサビを聴いてみてください。きっと聴こえるはずです!
この音単体だけ聴くと他の音とリズムも違うので、場違いな印象を受けるのですが、全体を構成する一つの音として聴くと絶妙に調和しているのを感じることができるのではないでしょうか?

更に昔に遡ると、より多彩な音を楽曲を見つけることができます。
最後にその代表格として「ゴーゴー幽霊船」をご紹介します。

音の美術館 ゴーゴー幽霊船

この曲は"音"という観点で言えばとにかくすごいです。
ハチ時代の名残を感じさせつつ、今の米津玄師らしさも感じる楽曲です。

アイネクライネと同様に変な”音”に注目して聴いていくと、そんな音のオンパレードである事に気づきます。もはや音楽では使わないような効果音が数多く使用されています。
しかも、歌詞のパートに応じてその音が変わっていくため、結果的にその音が会話体であるこの楽曲の独特な雰囲気を表現しています。

以上のように、米津玄師の楽曲は”音”に注目して注意深く聴く事で新たな一面を見つけるができます。
もし再び米津玄師の曲を聴く機会がありましたら、ぜひ”音”に注目して聴いてみてください!

おまけ 馬と鹿と応援

おまけとして「馬と鹿」での音の使い方も簡単にご紹介します。
こちらはラグビードラマの「ノーサイドゲーム」の主題歌であり、闘う人への応援歌として書かれた楽曲です。
この「応援」というメッセージを歌詞だけではなく”音”使って見事に表現しています。

注目いただきたいのは「打楽器」の音です。
打楽器で有名なものはドラムですが、「馬と鹿」ではスネアドラムの音が手拍子、バスドラムの音が足踏みのような音が使用されています。これはQueenの「We Will Rock You」でも使用されている音で、応援のイメージが強くなります。
更に3:13秒付近からマーチバンドの太鼓のような音が入る事で、応援席で聞いているような錯覚に陥ります。
「馬と鹿」は歌詞だけ見ると応援歌という感じはしないのですが、曲として応援歌のように感じるのは音の使い方によるのかもしれません。


※以上は全て個人の見解です。

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