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エルピスー希望、あるいは災いー

このドラマで描かれているのは日本という国家そのものだ。

正義も悪も曖昧になった現代、だれかが何かを判断をするときのほとんどの軸は、お金や利権でしかない。
身の丈以上の金銭的資本を溜め込み、欲を満たすための言動や行動が、次の欲望を生み出す。
果てることを知らない欲望。
それが人間の姿だ。

構想から実現まで

エルピスは構想から実際に制作されるまでに、
実に6年の時を経なければならなかったと聞く。

6年。
短い時ではない。

6年の間、日本はまったく変わらないどころか滑降するように人々の生活は苦しくなり、なんとも息苦しい社会となってしまった。
エルピスで描こうとした世界は6年の時を経て、変わらないどころかさらに悪い方向に向かっている。

日々、メディアを通して語られるのは、
誰かの保身や、世論誘導、話題が起きるのは隠したいことの裏返しと勘繰ってしまうほどの偏向報道。
我々の住む日本という国はエルピスに描かれた国家そのものだ。

長期政権が産んだもの

加計事件、森友公文書改ざん等々。
山口敬之が起こしたレイプ事件においては当時の刑事部長であった中村格の指示で山口は逮捕されなかった。その後、中村は警視庁長官となり、安倍元首相が銃撃された責任をとって辞任。安倍政権と共にトップにのし上がり、警察としてのキャリアを終えた。その後、彼は日本生命保険に入社。特別顧問を務めている。

これらの事件の顛末に政権への忖度はなかったのか。政権への忖度のため犠牲になった人はいないか。

タブー

報道におけるの最もタブーなネタは警察関係と何かで読んだ。
事件報道のほとんどは独自取材ではなく、警察発表を伝える。それがニュースとなる。
報道は警察のスポークスマンにいつからなったのか。
(このようなことに興味があればルポタージュの名著「桶川ストーカー殺人事件」清水潔著を読んでほしい。)

異常な記者クラブ制度

自由な報道ランキングでは、G7の中ではダントツ最下位の日本。180カ国中71位(2022年。ちなみに最下位は北朝鮮)

自立することを巧妙に避けられたような教育。

若者が政治に興味を失うように仕組まれた選挙制度。
戦後の全てが疑わしく感じる。

このドラマで伝えたいこととは

そういった大きな枠組みの話ばかりではなく、市民が市民のために戦う姿がドラマを通して語られる。

この国では政府の不利益になるような間違いは押し通される。
その間違いを正すのは小さな力の集合として市民一人一人が団結することでしか大きな力に対抗する術はないと伝えている。

現代における民主主義、資本主義の行き詰まりを感じさせる内容だ。

こういったドラマを作ることができる日本はまだ自由とも言えるが、そうならないことを祈って制作された気概のあるドラマだ。「新聞記者」に続く社会派ドラマとしてもっと多くの人に見てもらいたい。この国で今何が起きているのか知るきっかけになるのではないだろうか。

正義と悪

正義や悪とは後世が決めることとであり、歴史の中ではただの出来事でしかない。
何が正しくて、何が間違っているかは過去を振り返ってみることでしかわからない。
このドラマでは、それらに振り回されずに夢をみようと締めくくる。

夢を見る。
その自由を当たり前に享受できるように、せめて一人ひとりがまともでいよう。
このドラマは、私にそう、うったえかけてくる。

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