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あそどっぐインタビュー3日目 その3 「グレーゾーンなあかほし」

私は、あそさんを心底カッコいいと思った。
あそどっぐはどうやって今のあそどっぐになったのだろうか。
なぜ私はこんなにあそどっぐが気になるのだろう。
好きなんだろう。

あかほし(以下「ほし」): 精神障害なんかは、病名が付いて一般的に知られるようになったのはわりと最近ですもんね。
あそどっぐ(以下「あそ」): う〜ん、そうだよね。だから精神障害の方はまだまだね、偏見も多いし大変みたいだよね。隠してる人がいっぱい。
ほし: そうかあ・・・。すこし長くなるけど、私の話になっちゃって大丈夫ですか?
あそ:うん、大丈夫よ。
ほし:小中学校に身体の障害の人はいなかったけど、知的障害の人はいました。私は「あ、いるなあ」と思ってたんですけど・・・同級生がその子たちを差別的な呼び方をするわけですよ。それを聞くたびに「うっ」ってなる感じがありました。
あそ:ああそうなんやね。
ほし:今思い返すと「自分はふつうじゃないんじゃないか」って感じていたんですよね、小学校入る前からずーっと。小学校からは特に、組織へ馴染んでいけない感じが強くなりました。けれどもそれは頭でクリアに意識されていたわけではなく、漠然とした違和感がお腹に降り積もっていく感じ・・・とても潜在的なものでした。自分が何かすると、周囲はあきらかに驚いていて、知らない間に目立っている。自分としては驚かせようとか目立とうとか、そういう意図はない。気の済むように動くと、自然に浮いちゃってるっていう状態でした。
あそ:うん。
ほし:「自分はなんだかおかしいらしい」という感覚だけはあったから、同級生の差別性を感じるたび身をすくませて生きてきました。こう、差別的な、ネガティブな偏りもあるんですけど「あ〜、この子は障害があるからしょうがないや」みたいな、逆方向の偏りもあって、それも嫌いだったんですよ。なんか奇妙にやさしくして、まともに相手する気がないみたいで。
あそ: うん、そうやね。
ほし: それが空恐ろしかったので、私は直に関わるなかで「今コイツの中にドス黒いものは渦巻いてるな」と直感したら怒っていました、たとえ相手が障害を持っていても。でも、悪意が見えないときはふ〜んと思って見てただけっていうことをしていて。

〜〜〜

ほし:・・・で、私たぶん発達障害なんですよね(注1:文末参照)。
あそ: あ、そうなの?知らなかった。
ほし: そうそうそう。アスペルガー症候群(注2)。診断は受けてないんですが。
あそ: 「そうだろう」という。
ほし: そうそう。どうも乳児の頃から、母は「この子様子がおかしいぞ、なんかヘンだぞ」って思っていたらしいです(注3)。うちの母は教育心理専攻だったんですが、アスペルガー症候群のことはその時から知っていた。で、「この子まあまあ特徴が合うなあ」と思いつつ成長を見守ってきたそうなんです。そんななか、私が小学校4年生ぐらいの頃に人間関係でトラブルになりまして。そこで苦戦する私を見ていて、母は私のアスペルガーっ気を確信したそうです。けれども当時、母は「(トラブルが起こったのは)あんたが病気だからだよ」っていう言い方はしたくなかった。そういうわけで結局、知らされたのは高校か大学ぐらいの時でしたね。
あそ: 分かったときはどうやったの、気持ちは。
ほし: 楽でした。
あそ: あ、やっぱそう言うよね。僕の友達も楽になったって言ってたなあ。
ほし: あと、ちょっと脱力感もあったかな。自分で自分はおかしいんじゃないかっていう・・・言い方がむずかしいけれど、自分は” 狂ってしまっているのかなあ ”と長年悩んできたわけですよ、年頃になってからは特に。でも、” どう狂ってるのか ”までは分からないからとても不安でした。周りとの摩擦のなかで「なんかおかしいな」という違和感を覚える日々を生きてきたので、知ったときは「あ〜あ、そういうことだったのね・・・」って感じでした。
あそ: 合点がいくみたいな感じなのかな。
ほし: そうそう。もしかすると、お医者に診てもらったら私はアスペルガーじゃないのかもしれない。けれども、ともかく特徴がわりと当てはまるので、客観性を持って自分の偏りを把握していけるんですよね。そこからは格段に対処がしやすくなりました。
あそ: あ、そうか。そうね。対処法が見つかるね。
ほし: 例えると・・・自覚する前は、目が見えないまま走るような感じ。あらゆるモノに激突するから生傷が絶えない(笑) 対して自覚した後は、目が見えてるから「あ、ここ穴空いてるな。ここくぐればいいじゃん」と、そんな感じかな。
あそ: そうなんだねえ。
ほし: だからその、障害があるとかないとか、差別の話とかが、ずーっと他人事に思えなくって。差別の現場に立ち会うたび緊張感でチリチリしながら生きてきました。もちろん私自身、あれはひどい差別をしてしまったという失敗もたくさんあって・・・。なので、昔から障害やら差別やらの問題が気になって仕方がなかったのは、自身が不安定な立ち位置にいたからなのね、はは〜んっていう腑に落ち方もしましたね。ほんでまあ、わたしは一応、日常生活は送れているのでばっちりアスペルガーではない。きっと” 発達障害グレーゾーン ”と呼ばれるところに私はいるんじゃないかな(注4)。
あそ: うん。
ほし: 困るのは、人を怒らせてしまった時です。自分がグレーゾーンであることを自覚するまでは「なんでこんなに怒ってるんだ?」ってずーっと考え続けていた。でも、感覚のギャップが大きいから、なかなか正解にはたどり着けないんですよね。だから、次は怒らせないよう四方八方気をつけるわけです。
あそ: うん、なるほどね。なんで怒ってるか分かんないから、とりあえず思いつく限り気をつけようみたいな。それは大変だよね。
ほし: そう、呼吸がしにくいったらありゃしない(笑)
あそ: そりゃ大変だと思うわ。
ほし: アスペルガーを知ってからは、自分で考えてもダメなことが分かったので、母親に相談できるようになりました。「こういうことが起こって今こうなってるんだけど、相手は一体何を考えてるんだろうか?」って聞くんです。母はふつうの人の気持ちがそこそこわかるので、その人の気持ちを代弁してくれます。それでやっと「あ、そんな気持ちなの?じゃあこうすればいいかな・・・」と手を考えることができる。これでだいぶ生きやすくなりました。もちろん、自分で考えることも手放してはいないですけど。
あそ: ふ〜ん、ああそうね。それはいいね。
ほし: 私と似たようなところで手こずってる人を見ると、私にとっての母みたいな、自分と他者を仲立ちしてくれる人がいると全然違うんだろうなって感じます。
あそ: そうやなあ、うん。ああ、なんかわかりやすかった。
ほし: ただ、素人目で「発達障害なんじゃないか」って判断するのは危険っていう話があって、それはたしかにそうだなとも思っています。
あそ: うーん、そうだよね。それはそうだと思う。

〜〜〜

ほし: あそさんに、私アスペルガーの気があるんだっていう話をいつしようかと思ってたんですけど、自然な流れで言えてよかったです。どうです?やっぱそうかって感じでしたか?
あそ: いや、ぜんぜん分かんなかったね。
ほし: あ、そうなんだ。へえ〜。
あそ: ちょっとおもしろい子だなとは思ってたけど。だけどぜんぜん分かんない、うん。
ほし: ああ、ほんと。
あそ: うん聞いてもまあ、ああそうなんやぐらい、だね。申し訳ないけど(笑)
ほし: ふんふん、そっかそっか。それぐらいの脱力具合が一番ありがたいです、話す方としても。
あそ: あ〜よかった。
ほし: あんまり重々しく受け止められても。
あそ: うん、ねえ。やりにくいもんね。
ほし: いや〜、自覚ない頃はキツかったな〜!
あそ: 分かんないうちはつらいってよく言うよね。

注1:得意・不得意の差がとても大きいため、日常生活に困難なことが出てしまう事が多い。参照:「発達障害」
注2:発達障害のひとつ。コミュニケーションが不得意で、こだわりが強いなどの特徴を持つ。参照:「アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)」
注3:好きなものをみつけると4時間ちかく身じろぎせずに見続けるような2,3才児だった etc
注4:発達障害の「傾向」はあるが「診断」が降りていない人をさす言葉。参照:『発達障害グレーゾーン』姫野 桂

次回、「病名がつくことのむずかしさ」

あそどっぐ
1978年佐賀県生まれ。熊本在住。お笑い芸人。
あかほしあまね
1991年東京都生まれ。『コバガジン』のライター。

前回の記事はこちら 「「障害のある子はどこに行ってるんだろう?」」




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