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2023年に読んだ本

2023年に読んで印象に残った本を5冊。
この年に出版された本ではなく、あくまで私が今年出会った本の中で印象に残った本ということで5冊あげてみました。


怖かった本

怖い話でよくあるのが、知らずにあの石を動かしちゃったとか、変なものを持って帰っちゃったとか、心霊スポットに行っちゃったとかで祟られるパターンだと思うが、この本はそうでないところが怖い。
冒頭の地下にぐるぐる降りていくイメージ、降り積もる灰などの描写も、不気味な雰囲気たっぷりだ。
また、途中まで読者も主人公と一緒に騙されるような仕掛けがあり、それもまた、自分もそうなってしまうのではないかという怖さのもととなる。
しかし本当の怖さは、終盤で、身近な人に祟りと縁がある人が出てくるところだろう。口には出さなかったけれど、あの人もこの人もといった感じで、祟りとはこうも身近なものであるのか!だとしたら自分も祟りと一生無縁でいられるのかどうかと思ってしまう。
というわけで怖かったというより、恐れるという感情を改めて確かめるような一冊であった。

学ぶということ

分類すると「民俗学的ミステリー」だそうだ。
主人公、裕は、専門外の史学を通じて、自身のルーツを調べていく過程で、古文書がたくさん出てくるのだが、難解な古文書を裕と一緒に勉強しながら読み解く感じで、ストーリーとは別に知的好奇心をくすぐられる。
学芸員と、資料館の職員が出てくるが、この二人の対比とやりとり、持論の展開など、学ぶっていいなと思わせられる。
「まほり」の語源については途中自分が予想していたのと全然違って、意外過ぎてそれもよかった。(自分の予想は月並みすぎて、実際にそう結論づけられるとがっかりだったと思う。)
知りたいというのは、学ぶということの根幹にあるものなのかな。
ストーリーの面白さもあったが、そういうことも強く感じた。

心の問題

若い時から、細々と心理学関係の本を読んできた。
この「死ぬまで生きる日記」は土門蘭さんがカウンセリングを受けた記録である。
やはりプロの文章を書く人だけあって、土門さんの気持ちがとてもよくわかりやすく説明されている。
私が一番たくさん心理学の本を読んでいた時代は、河合隼雄全盛期だったので、カウンセリング=傾聴というイメージであったから、土門さんのカウンセリングの記録を読んで抱いた感想は、カウンセリングって思ったよりアグレッシブに問題解決のほうに導いていくのだなということだった。
さて、「死にたい」なんて思いたくないのは誰でもそうなのかもしれないが、土門さんの「死にたい」気持ちはどうなったのか?
やはりこの本を手に取る人は、自分も「死にたい」と思った人が大半な気がするから、結末が気になるであろうと思う。
でも結末だけ知ろうとするのではなく、土門さんのカウンセリングと、土門さんの気持ちをぜひ読むことで追体験してほしい。
最後は素晴らしい。私も「死にたい」気分がたまに押し寄せる人間だったので、途中まで感情移入しかできなかったのだが、最後は、土門さんに拍手を送っている自分がいた。

古典の名作

友達に勧められて読んでみた。
「三体」を読んでから、もう私の頭の中は宇宙人でいっぱいだったのだが、この本で、もう宇宙人はいるに違いない!となってしまった。
こんな昔から、同じようなネタ(?)があったのかと感動したり、また大掛かりな仕掛けにビックリしたり。

読まず嫌いだった

反省しました。なんで今まで読まなかったのかな?お笑いについての本だと思っていたから、お笑いというものは深いものだから、自分には到底理解府のだという考えだったからか?
感想は、純粋に良かったし、好きだと思った。
先輩の壊れていく感じは、中学生の時にはまった太宰治を思わせ、懐かしい気がしたりもした。
太宰は自分が壊れていくのに対して、「火花」の主人公は壊れていくのを見つめる側で、先輩を見つめる目に、憐憫と憧憬、相反するものが感じられ、そこにダダイズムの美しさと悲しさがにじみ出ていて、なんとも味わい深い作品だった。
また、お笑いについて蘊蓄を語る場面は、人生にとっても響くセリフもあって、そういう意味での面白さから、格言好きの心もくすぐってくる一冊。

番外編 戦争を忘れない

自伝的な角野栄子さんの作品。
毎年、大体夏に、一冊は日本が戦争をしていた時代の本を読むことになる。意識してというわけではなく、やはりあの、お盆のころの夏の空は、私にとっては自分は知らない戦争を思い起こさせる空なのだ。
イコの心理が巧みに描かれていて、とてもよかったし、この時代の悲しさがしみじみと感じられた。
継母の光子さんとの少しうまくいかない関係とか、子供時代の怖い気持ちなどが平易な言葉で綴られていて、角野さんのすごさを感じるとともに、戦争があった時代を語り伝えていくことも大事なのだと思った。

番外編2 悲しい出来事

私が少女だった頃に、当時、少女小説(ライトノベルという言葉はまだなかった)と呼ばれていた山本文緒さんの作品に出合って、それ以来細々とではあるが、読み続け、作品を楽しみにしていた作家さんであった。(確か私が出会ってから間もなく、大人向けにかかれるようになったのではないか。)
あまり熱心に追いかけていたわけではないので、あれ?最近新作ないな、とおもっていたらうつ病にかかっていたことを知り、そこから復活されて、また読める!となった先、亡くなられたことを知ったのだった。
本屋大賞の候補になった「自転しながら公転する」はとても良かった。自転しながら・・・は若い女の子が主人公だったので、そのうち、もう少し歳をとった女性の話も読みたいと思っていたのに。
悲しい本だと思うが、この本もやはり読み物としてよいものだと思わせてしまうところがやはり作家なのだなと。思い通りにならない体で、なんとか最後の本を出そうとするところなど、とても切ない思いで読んだ。

以上です。
世の中にたくさん本があるのに、あとどれくらい読めるんだろう。

2023年後半から、ノートに感想を書きつけるということをするようになり、以前よりじっくり読書するようになったと思います。
ノートは感想とか、内容とか、ためになるとかそういうことではなく、その時の自分の気持ちとか、その時の自分が感じたことなどを振り返ることができていいです。
同じ本を2度以上読むということはあまりしないのですが、今の自分だったら同じ本を読んでも、違う受け取り方をしただろうなあということも想像できたりして、いいものだと感じます。

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