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夏目漱石の『こころ』をどう読むか⑩ Kは正直か?


感覚ではなくロジックで読む

 これまで夏目漱石の『こころ』について言われている駄目な解釈をまとめてみます。

・愛と友情の物語と小さく括ること→作品全体を捉えていない
・先生をエゴイストと見ること→「私」による全肯定、冒頭のすがすがしさを捉えていない
・明治の精神を明治十年代が持っていた多様な可能性と見做す事→明治の精神は明治天皇には始まり、明治天皇で終わる
・先生の死後、静も後追い自殺をしたとみること→静は生きている(「私」は現に静が先生の過去をまだ知らないことを知っている)

 今日立ち読みした奥泉光の『夏目漱石、読んじゃえば?』はひどい本でした。小説に正しい読み方などないとしながら『こころ』は失敗作だと言うのです。しかしそうではないでしょう。確かに間違った読み方というものがあり、最低限ここまでは読めていなくてはならないという最低ラインがあるからこそ国語テストというものがある訳です。そういう意味では、静が生きているところまでは読まないといけません。

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