2022年7月の記事一覧
夏目漱石『明暗』の技巧① 浮遊する視座とパースペクテイブ実在論。
谷崎潤一郎が徹底して『明暗』を批判していたので、谷崎潤一郎のロジックに従い、『明暗』に優れた技巧が沢山あることを具体的に示して、その誤解を解いて行きたいと思います。
え?
それ、誤解なんですって。
そもそも私自身『明暗』を上品な作品だとはみなしていません。むしろ、どうして漱石がボロボロになりながら、そしておそらくはこれが最後の作品になるのではないかとうすうす感じながら、『明暗』のよう
小宮豊隆「芥川龍之介の死」
芥川龍之介の死
〔生きてゐた時分の芥川君と私とは、お互に呼び棄てにするやうな間柄ではなかつた。然し、芥川君が既に一箇の歷史的な存在になつて了つた今日、私は、敢て彼を呼び棄てにし得る自由を持つ事にしたいと思ふ。〕
芥川はなぜ死んだか。― 芥川が死んだのは、芥川があまりに眞面目であつた爲である、あまりに銳敏なモラル·センスを持つてゐた爲である、と私は思ふ。
芥川は生理的に、生活力の缺乏の爲に
大人の教科書編纂委員会はどの程度教科書を読めているのか① 芥川龍之介
漱石が『鼻』を褒めた理由
この点について大人の教科書編纂委員会は「短編作家としての力量、着眼点を絶賛した」(『大人の教科書 国語の時間』青春出版社、2002年)と書いていますが、これは間違いですね。そのように具体的には書かれていません。書いていないことを勝手に付け足すのは誤読です。大変面白いと書いているので、「面白さ」を評価したとみるべきでしょう。「力量、着眼点」と書いてしまうと自分が勝手に付