美術史を1から勉強してみた 【見える世界が変わった編】
・美術好きと言いつつジャンルが偏りすぎている
・世界史未経験
というどうしようもない不安材料を抱えながら、とりあえずは美術検定2級を目指して勉強を始めることに。
勉強を始める前は、美術史を勉強したとて、美術館に行ったときにちょっと興味が増えるくらいだろうな~くらいに考えていた。
そんなに自分の生活や考え方は変わらないというか。
だが、美術史をまるまるっと勉強したことで、思っていたよりも日々の意識に変化が出たり、新しい気づきがあった。
ちょっと大げさだけど、見える世界が変わった。
(きっと真剣に向き合った証拠だから、そこは素直に自分を褒める。)
今回は特に驚いたり、大きく変化したことを書いていこうと思う。
1. メンタルに良い
これ、美術史を勉強して、一番の学びかもです。
ちょうどタイムリーに、「メンタルに効く西洋美術史」という本を紹介するポストが流れてきて、頷きすぎて首がもげるかと思った。
どうしても、画家=天才というイメージがあった。
特に私は現代アートが好きで、これらには社会の課題や人間の無意識に訴えかける作品が多い。
新しい気づきや、自分の無意識さに気づくこともできる。
だから彼ら彼女らが作るアートが好きなのだが、それと同時に、自分の経験や学びを軽々と超えることがあり、思考停止状態になることも。
言葉を選ばずに言うと「この人の頭の中どないなっとんねん」「ほんまに人間か?」という状態。
でも、たぶん、違うのだ。
違うのだと、美術史を勉強したことで気づいた。
有名な人も、そうでない人も、私と同じ、人間という生き物なんだなと。
ただ「絵を描く」という行為一つにとっても、心の叫びの表現手段としてそれを用いる人もいれば、生活費を稼ぐために天武の才を活かす人(そして本人が望んでなかったりする)、画家という職業に憧れてやっとの思いで絵を描いた人。
ピカソのように最初から神童だった人もいれば、努力がやっと認められたゴヤ、なかなか芽が出ずに描き方を変えたセザンヌ。
当たり前だけど、それぞれのやり方で、進んできたんだなと。
だから、この人みたいじゃないから、と思う必要はないんだ、と。
どうしても人と関わって生きていく以上、比較という行為を通して落ち込んでしまうことも多かった。
けど、画家たちの人生を知れば知るほど、自然に楽になった。
あと面白かったのは、「いい人」も「悪い人」もいたこと。
経済的にも身体的にも印象派を支援したバジール、娘溺愛の岸田劉生、犯罪しまくりのTHE悪人・カラヴァッジョ、臨月の奥さんを船で連れまわしたとされる青木繁。
とにもかくにも、なんだか元気がもらえます(笑)
特別にならないでいいんだなというか、仕事も趣味も私生活も、少し気が楽になりました。
※このあたりの、画家たちの人生については山田五郎先生のYouTubeがめちゃくちゃ面白いので、ぜひ見てみてほしいです。
特に女性関係は爆笑したりドン引きします。
(ここに書いたのもほぼ山田先生の動画からです。推しのクールベさんを貼っておきます。)
2. ディズニー、すごい
実は、数年前まで私はディズニーオタクだった。
もともと昔からBGS※に興味があったのだが、ショーやパレード、キャラクターグリーティングの魅力を知り、ランドで開催されていたハロウィンのパレードで年間パスポートを買う決心をした。
※BGS:バックグラウンドストーリーの略。エリアやアトラクションの時代背景や設定のこと。
ご存知の方も多いかと思うが、ディズニーランド・ディズニーシーは、とにかくこだわりや設定が半端ではない。
有名なところだと、ディズニーシー入ってすぐのミラコスタ(ホテル)の壁は、実際にイタリアからだまし絵画家を呼んで、のんきにやりすぎて工期がのびまくったとか。
美術史を勉強する前は、ある程度のBGSは知ったつもりで満足していた。
熱心な方の考察や公式からの情報を見て「へ~~」と思っているだけで、自分がなにか一歩踏み込むことはなかった。
それがなんと、美術史を勉強している最中に、どんどんどんどん、「え…?てことは、あの○○って…?」「もしやこれとこれのつながりって…?」と思うことが増えた。
好きなものの見方が、全く変わったのだ。
例えば、ディズニーシーのゴンドラ近くにあるレストラン・「リストランテ・ディ・カナレット」。
「これって画家のカナレット…?!」と思い調べてみると正解。
お店の名前はカナレットから引用し、カナレットが描いた絵画も飾っているそう(見たい)。
ということは、あのエリア一帯はカナレットが活躍した18世紀が舞台になっていて…ここの床の模様と…あそこと… と、どんどん妄想が膨らむ。
ある程度知り尽くしたと思っていたのに。
好きと好きがつながり、こんなにたくさん新しい発見があるとは。
まだ、ディズニーに対してワクワクできるのだと、嬉しくなった。
また今後、各エリアの考察だったり、ディズニーの美術作品についても掘り下げていきたい。
3. 絵が上手いから有名なわけではない
お恥ずかしながら、今まで有名な画家は「上手い」から有名なのだと思っていた。
だが、当たり前と言われればそうなのだが、平成で流行ったメイクで街に出ると「流行おくれだよ~」となるように、その時代によっての「上手い」がある。
そして今でも有名な画家たちは、「上手い」だけでなく、別の要素が絡み合っていることが多く、そのために有名なのだと気づいた。
例えば、日本でも超人気な「モネ」。
なぜあのモネが有名かと言えば、「印象」を描いたからなのだ。
それまでの時代は、どれだけ正確に、そして丁寧に、実物そっくりに描けるかどうかが「上手い」だった。
そしてそれが、美術界で活躍するための基準だった。
それに対してモネは、仲間たちとともに、自分の目に見えた「印象」を描こうとした。
つまり、新しい絵の描き方を確立したのだ。
一方でアンリ・ルソーは、写実的という意味では、お世辞にも「上手い」とは言えない。
けれどここまで多くの人たちに愛されるのは、彼の独特の色遣いや、どこか親しみのある、言葉や基準では表せられない「魅力」があったからなんだと思う。
美術史を勉強していくなかで、「なぜこの人が有名なの?」「なぜこの絵が有名なの?」のヒントや答えをたくさん知れた。
自分なりの解釈を含む部分も多いが、別記事で投稿できればと思う。
4. 街中にあふれるアーティストリスペクト
ディズニーの話や、なぜあの画家は有名か?の話にも関連してくるのだが、美術史を勉強したことで、街にあふれるポスターやデザインを見ると、「これってあのアーティストをリスペクトしている…?!」と思うことが多くなった。
ここでまず書いておきたいのだけど、リスペクトは「パクリ」ではないと思っている。
たまに自分で絵を描くこともあるのだが、好きなように描いているつもりでも後から自分の絵を見ると、好きな画家の画風に似てるな~と思うことが多々ある。
好きで憧れてしまうからこそ、似てきてしまうのだ。
そして美術史を学ぶ中でも、この「リスペクト」が、もう本当に、たくさん出てくるのだ。
「~このときの○○の画風は、のちの●●に影響を与えた。」というやつ。
例えば、ピカソはセザンヌリスペクトだったし、モネやルノワールなどの印象派たちはマネを師匠にしていた。
ほ~~~こうして時代は受け継がれていくのだな~と思いながら勉強し、街中を歩くと、「あれ?これって○○に影響受けてない??」と思うことが多々。
もちろんその作成者に聞いたわけではないので真偽は不明。
だがものの見方が変わったというか、今まで何も感じなかったことを感じるようになったという事実が嬉しい。
最近見つけたのは、横浜駅モアーズのクリスマスポスター。
これを見た瞬間、フリーダカーロの自画像がすぐ頭に浮かんだ。
こうして並べてみると、やっぱりどこか似ている気がする。
私は岡本太郎が好きなのだが、ピカソを勉強している最中に「民族文化からの影響や戦争への作品とか、いや岡本太郎ってかなりピカソに影響を受けているのでは…?」と思い調べた。
そうしたところ、やはり岡本太郎はピカソの作品からかなりの衝撃を受け、交流もあったたそう。
こうしたように、自分の中の知識がトリガーになって、新しい疑問や発見につながる。
今までもいろいろなことを勉強してきたが、美術史は特にそれが顕著だと感じた。
(自分の好きな分野だからということもあるのかも…?しれないけれど)
5. まとめ
これらが、美術史を勉強して変わったことや気づいたことだ。
変わる前や気づいてしまう前には戻れないから、それが幸か不幸かは分からない。
(美術史家のエルンスト・H・ゴンブリッジも著書「美術の歴史」でそんなことを言っていた)
でも、私は、勉強してよかったと感じる。
分かりやすく、あぁ自分の世界が広がったなと、思えたからだ。
そしてまだまだこれはほんの一部だし、自分の学びを深めるためにも、気づいたことや自分の考えを書き留めていきたいと思う。
どうぞまたよければ、お付き合いください。
ps:美術検定2級の自己採点をしました。ボーダーぎりぎりでした…
受かったら勉強法とか書こうと思います………
12月末に結果が分かります………
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?