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「あそび」を通して子どもの「かわいい」を引き出す

こんばんは!

僕は現在、児童館で働いています。
仕事内容は主に「子どもと遊ぶ」こと。

児童館と言えば、子どもや職員、親が一緒になって、和気藹々と「あそび」を楽しんでいるイメージがあるかもしれません。
そのイメージは、もちろん合っています。
ですが同じくらい、大人が怒ったり、イラついたり、注意したり、雰囲気が悪くなったりもしています。
そんな時、つくづく思うのです。

子どもがかわいい表情を見せてくれる環境を沢山作ってあげるのが、僕たちの仕事だよなぁ、と。

「廊下は走らない!」「暴言言わない!」「人をぶたない!」「下ネタ言わない!」「職員の大事なところをパンチしない!」
など、毎日毎日子どもとバトルの日々です。
子どもだって、ただ「やるな」と言われても、納得できなければやめません。
そうするとお互いますますヒートアップしてしまう。

子育てだって同じですよね。
子どもが「かわいいな」と思う瞬間もあれば、本気で「イラッ」とくる瞬間もある。
疲れていればなおさらです。

特に、1年生が混じった「集団あそび」は大変です。
もうすぐ5月も終わり。
新1年生が児童館に来てからおよそ2ヶ月。
まだまだ幼児性を引きずっている彼らは、2年生以上の子たちと比べると、何をするにも時間がかかります。

新1年生は好奇心旺盛で、本能の赴くままに児童館中を走り回る。
そういう時、ついつい「注意」ばかりしてしまいますが、そもそも彼らは何を注意されているかわからないことが多いです。
「その行為が何故いけないのか」それを丁寧に説明してあげる必要があります。

鬼ごっこなどの集団あそびをしていると、ルール説明中に走り回ったり、話を遮ったり、壁をよじのぼったり、好き勝手に振る舞います。
そういう時こそ、職員の腕の見せ所。
あの手この手で、しっかりと彼らに「ルール」を伝えます。

では、何故「ルール説明」が大事なのか。
それは、「ルールの共有」が、同じあそびに参加する者同士で欠かせない要素だからです。

鬼ごっこなのに、鬼の人が地面に寝る。
こおりおにをしているのに、捕まった人が勝手に生き返る。
そういうことをやっていると、やっている本人は楽しいかもしれませんが、純粋に鬼ごっこをやりたい他のお友達は面白くありません。

もちろん、子どもは我々大人が思いもしないようなアイディアを思いつくことがありますから、そういった「あそび心」を、時には思う存分楽しんでもらうのは大変良いことだと思います。

ですが、それはみんなが「そういう時間であること」を共有している時にやらないといけません。

「おふざけ」も立派な「あそび」だと僕は思います。
「みんなでおふざけするあそび」それを参加者全員が理解していて、楽しめている状況なら最高です。
ですが、「鬼ごっこ」をやっている時にはきちんとその「ルール」を守らないといけない。

さらにいうと、「おふざけ」という「あそび」にも「ルール」はあります。
「人を本当の意味で傷付けてはならない」「あそべる部屋はこの場所だけ」「使える道具はこれだけ」
そういった「ルール」を、子どもたちはあそびの中で、時には口頭で、時には明文化して、時には暗黙のうちに了解し合います。

そして、あそびの中で絶えず行われる、上記のような言語、非言語を問わないコミュニケーションは、子どもの発達を促す上で、かなり重要な瞬間なのです。

だからこそ、きちんとあそびに参加するメンバー同士での「ルールの共有」は大事なのです。
「この時間・空間は、こういうことをやる時間・空間だよね」ということをしっかりと相互に握り合うのです。

その時に初めて、そこにいるメンバーは「輪」になります。
全員がその場所に参画する権利があり、同時にルールを守る義務が生じている状態です。

きっとそういう関係性の中で、子どもは社会性を養っていくんだと思います。

その「輪」がキレイな「輪」であればあるほど、子どもたちは生き生きとした表情を見せてくれます。

今日も、「こおりおに」で自由に振る舞う1年生にフラストレーションが溜まっていた2年生の男子たちが暴れ出しました。
捕まっても逃げる、途中で抜ける、床で寝転がり、1年生の足を引っ掛ける。そして泣かす。
それらの行為で、1つの「輪」が崩壊しそうになりました。

そういう時、職員と子どもは、「対立する関係」になってしまいます。
注意する者と逆らう者。
それは環境がそうさせるのです。

だったら環境を整えてあげればいい。
その手段はいくつかあると思います。
今日は「あそび」を変えました。
「こおりおに」をやめて「王様ジャンケン」というゲームに変えてみると、子どもたちの状態はとても良くなりました。

「王様ジャンケン」は、2チームに分かれてそれぞれ王様を決め、王様が持っている「たから」を多く獲得した方が勝ちというルールです。

王 ●  ●  ●      ◯  ◯  ◯  王

4対4でやる場合は上記のように並びます。
「先攻」「後攻」を決め、まず「後攻」のチームは丸の部分に1人ずつ立ちます。
「先攻」のチームは丸の部分に立つ人と1人ずつジャンケンをし、勝ったら2番目の丸の人と、またジャンケンをします。勝ったら次は3番目の人と。
そうやって王様に辿り着き、王様にジャンケンで勝つことができたら「たから」を獲得できるというあそびです。
負けたら自分の陣地の壁まで戻ってからじゃないと、再びジャンケンができないルールです。
そして、再び1人目から順番にジャンケンで勝っていかないと、王様に挑むことはできません。
それぞれ何分かずつ「攻め」と「守り」のターンを行い、より多く「たから」を獲得できたチームの勝ちです。

上記のようなルールですから、「運動神経」や「学年」は関係ありません。

ルールも割とシンプルなので、新1年生でも理解することができます。
やると結構燃えるので、2年生男子も楽しんでやります。
途中、6年生の女子が入ってきて、飛び入り参加する様子も見られました。

ジャンケンの勝ち負けで一喜一憂し、負けたら自分の陣地までダッシュして戻る子どもたちを見て、心から「かわいいなぁ」と思います。

彼らは心の底から「たから」が欲しいのです。
目の前の相手に「ジャンケン」で勝ちたいのです。
そして、勝った時に周りのチームメイトや職員に「すごいね!」と褒められることで、自己肯定感が上がり、誇らしい気持ちになります。
その時の彼、彼女はまさにヒーロー。
だから「ルール」を破って「輪」を乱すことはしません。
真剣にその「あそび」を楽しみます。

よくデザインされた「あそび」はその「面白さ」でプレイヤーを惹きつけ、「良い状態・環境」を作り出します。

我々児童館職員は、そういった「あそび」を幅広く知り、かつ上手くファシリテーションする(あそびを仕切る)ことが求められるのです。

じゃないと、いつまで経っても「注意する者」と「される者」という関係性は変わりません。

本気であそびを楽しんでいれば、その途中であえて邪魔をするような行動をとることはありませんし、かまってほしくて寝転がることもありません。
だから職員はただ彼らを褒めればいいのです。
彼らの様子を楽しそうに眺めていればいいのです。
もちろん、一緒にあそびに参加することもOKです。環境が、我々と子どもの関係性をそのようなものにさせるのです。

あそびを通して子どもたちの「かわいい」を引き出す。

多分、それが「プロ」の児童館職員だよなぁと思った今日この頃でした。
これからも精進します。

今日も読んで頂きありがとうございました!

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