人が温泉に惹かれるたった一つの理由

二日目は谷地温泉に宿を取りました。
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温泉は2つの湯があり、1つは38℃の零泉と言われる下の湯でもう一つが42℃の白濁した上の湯だ。
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私はぬるま湯が好きだ。
熱い湯は入った瞬間はとても気持ち良いが5分も入ってれば少し苦しくなってくるし、リラックスレベルも徐々に下がっていってしまう。
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ぬるま湯にはそれがない。
常にリラックス。無限にリラックス。苦しくならない。無限にぼーっとしたり何か考え事ができる。自分に向き合うことができる。
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みなさんはどれくらい自分と向き合う時間を持っていますか？
平日は仕事や学校、休日もなんだかんだで自分と向き合う時間を作っているという人は少ないのではないだろうか？
自分の人生の意味は？これからどういう人生にしたい？将来の夢は？目標は？
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斯く言う私も、普段じっくり自分と向き合うことなど無い。
零泉に浸かりながらの自分との対話は非常に有益ものとなった。
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「どんな人生を送りたい？」
「優雅な人生を送りたいなぁ」
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「優雅な人生って？」
「美味しい物いっぱい食べて、何もしない時間を持って、でも何かを学び続けるみたない感じ」
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「じゃあ優雅な人生を送るにはどうしたらいい？」
「具体的にはわからないけど、やっぱり仕事に取られる時間が多いよな〜、週休3日で1日6時間勤務とかだったらいいのにな〜でも現実的にきついよな〜そんな会社ねぇしな〜」
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「あるぞ」
声が聞こえた。
脳内の自分との対話ではない。
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声の方を見ると、そこにはお姫様がいた。
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「そなた、名をなんと申す」
「こば…ちゃんねる…です」
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「そうか、こばちゃん。こばちゃんは海賊王になりたいのだな？」
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言ってねぇ
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「ふふ。わかっておる。いいから私に着いてこい。一緒に旅に出るぞ」
「旅？いや、そもそも、まさに今青森の旅をしている最中なんですが」
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「青森？ここは青森ではないぞ？」
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ん？じゃあどこだ？
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「桃源郷。こばちゃんにとってはな。私とおしゃべりできているんだぞ？」
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自意識が強すぎる
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「自分からしたらって、じゃあお姫様からしたらここはどこなんですか？」
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「動物園」
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人として見られてなかった
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そこでようやくお姫様は馬から降り湯船へ入り私と向き合った
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「うげぇ服がくっついてキモい」
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服を着たまま入るからだ。綺麗なドレスなのに。
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「じぃ、あれを持ってこい」
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お姫様がじぃと呼ぶ男性。馬の隣でタキシードスーツに身を包んだ7〜9歳くらいの男の子だ。
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「お持ちしました。」
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渡されたのはダイビング用フィンだ
私の分もある。
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「ほら、行くぞ！」
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私の手を掴んで湯船に潜った
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さっきまで湯船の底にお尻がついていたのになぜか底が無い
潜り続ける
咄嗟だったのでわけがわからずただひたすら息を止めお姫様の手を強く掴んでいた。
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ザッパァーン
勢いよく水面から顔を出すとそこは女子風呂だった。
即座に警察を呼ばれ即座に警察が来た。
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ここは雪山の奥にある温泉だ
今から車で山を下るのは危険だというとこで、私の体をスノーボードの板にして警察が上に乗り山を下ることになった。
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こんなの不当な逮捕だ、こんなの無いだろ
なあ警察さんよ、俺はもう覚悟を決めた。せいぜい楽しいスノーボードにしようぜ
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警察の足から力が伝わるが警察の意思通りに曲がったりしない。コースは俺が決める。
これはせめてもの抵抗だ。板にだって意思はある。
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俺を不当に逮捕したやつに最大の復讐をするにはどうすればいい？
雪を全身に受けながら必死に頭を回転させる
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そうだ！これしかない！
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俺は雪がたくさん積もっている場所を狙って猛スピードで突っ込んだ
時には木をも薙ぎ倒し積雪を荒らし続けた
雪崩を、、雪崩を起こすんだ！
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必死の執念は実を結び雪崩を起こすことに成功した。
雪崩は進むごとにその勢いを増し、木を巻き込み、電柱を巻き込み、家を巻き込み、山を降りても勢いを増し続け、平地でも勢いを増し続け、青森から山口まで日本列島本州の全てを飲み込んだ
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日本列島本州を見せしめに、北海道、四国、九州をまとめ上げ、海賊王に俺はなる！
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そんなことを考えられるから、ぬるま湯が好きだ。

そんなことよりも、猫がかわいい。
宿に来た時、お出迎えしてくれた、帰る時、お見送りしてくれた、猫が、とても、かわいい。