ゆきだるまとけたら 13

「ねぇ、こんな寒い中何するの?」

林君は薄くつもった雪をさくさく踏みながら、グラウンドを横切っていく。

「寒いからできること。とかなんとか言って、かぐらちゃん着いてきてるし」

「……今日は暇だから。それだけ」

どうして私、林君なんかに着いてきてるんだろう。林君が、誰もいない放課後に何をするのか気になっている。そういうちょっと非日常的でモヤモヤを忘れられるようなことを探していたからちょうどよかった。ただ、それだけ。

「よし、雪集めて!」

林君は嬉しそうに私に指示して、しゃがむと自分も雪をかき集めはじめた。

「え、ちょっと手袋しなよ! 寒いよ」

「これくらい大丈夫だって」

「雪集めてどうするの?」

「えー」

林君はこっちを見て照れたように笑った。

「ゆきだるま作る」

この人知ってて言ってるのだろうか。私がこの前ゆきだるま作って、先生の車に乗せたこと。どうして林君がそんなことを言い出したのか分からずに、私はしばらく黙って立っていた。

どんどん雪が集まって、ひとつ雪玉ができる。ふと言葉がもれた。

「ゆきだるまなんてね、とけたら汚いよ」

林君は手を止め、私を見あげた。

「汚いかな? 俺はそう思わないけど」

すん、と鼻をすすり林君はまた雪を集めはじめた。手先が赤くなっている。

どうしてそんなに必死に。

林君の隣にしゃがんで、私も雪をさわる。ひやりとした。

「とけたら、あったかくなったんだなーって感じする。俺は、あったかい方が好きだしね」

顔をのぞきこんできて、林君はにこりと笑う。その顔を見ると、なぜだか鼻の奥がぎゅっとした。

「ゆきだるまなんて、子どもぽくない?」

「子どもっぽいっていうか、可愛いいんじゃん。みんなが雪合戦してる中でゆきだるま作ってるかぐらちゃんも可愛いかったし」

やっぱりこの人、見てたんだ。

「またそういうことを言う……」

「俺はそんなかぐらちゃんがいいと思うんだよね。よし! できたっ」

雪玉が二つ完成した。林君はひとつを上にのせて、ゆきだるまにする。小さなゆきだるまだった。

「かぐらちゃん、目つけてよ」

言われるまま、私は小石を二つ拾ってつけた。

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