ゆきだるまとけたら 7
「ちょっとごめん!」
林君の顔を見る間もなくそう言って、私は走り出した。
先生、先生ーー。
車は駅のロータリー手前で左折して、あっという間に見えなくなってしまった。追いつけなかった。いや、車に走って追いつけるわけない。わかっているのに。先生の車を見ると、追いかけずにはいられない。
ぽたぽたと脚になにか垂れた気がして、ふと下を見るとスカートと左脚に茶色い液体が垂れていた。
「あ、アイス」
夢中で、左手にアイスのカップを握りしめていた。カップの中は、溶けてぐちゃぐちゃだ。バニラの白がチョコレートの茶色に侵食されて、きたなかった。ゆきだるま、とけちゃった。
「はは」
乾いた笑いがもれる。私ってつくづく、よごすことしかできないんだ。駅構内のゴミ箱にアイスを捨てて、ティッシュでスカートと脚を拭いた。
結構おいしかったのにね。走るからだよ。その上先生には会えなくて、私は全部を取りこぼした。
なぜだか泣きたくなったのを、必死にこらえてちょうどやって来た電車に飛び乗った。
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