探してばかりだったころの夢

私は教室であなたを待っていた
もうすぐ会えなくなるのを知っているから

黒板のチョーク入れを開けたり閉めたりして
時間をつぶす
ロッカーに誰かが張ったマグネットを眺めて
なんでもないふりをする

部活終わりのクラスメイトが
鞄を取りにやってきて
何やってるのと
不思議そうにこちらを見てもどこふく風

だってあなたに伝えなきゃいけないから
ずっと待ってる

もうどこにも
あのときのあなたも私もいないから
今ここで会わないといけない

待ちくたびれて薄暗い学校を早足でまわる
あんまり立寄らなさそうな
物理室 図書室 美術室から探そうか
楽しみは最後にとっておきたいから

教室をひとつひとつのぞいたら
やっぱり見つけた
相変わらず人に囲まれているところを

そうだね あなたはあのあと
他の人と過ごしたんだった

こっちを見るとわかってて
私は知らんぷりで廊下を歩く

そうやってもう声をかけない私に
驚けばいい
あんなに探したのに
もう話せるようなことはなにもない

気がつくと私の顔のすぐ目の前には
肩があった
白くぱりっとしたシャツに包まれた肩

そのシャツはいい香りがする
だってそう
私が選んだ洗剤の香り
ちゃんと体に悪くない無漂白無香料のもの

それをかぎながら
私は遠くへきたことをしる
そしてこれでとてもよかったのだと
探していたころの私に教える


#小説 #夢 #恋愛

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