ゆきだるまとけたら 12

先生が新婚旅行のために学校を休んだ初日。その日は冬の終わりなのに寒さが戻って、また雪が降った。朝からチラチラしていた雪は、夕方にはうっすらつもりはじめていた。

「早く帰らなきゃ、電車止まるかも」

クラスメイトたちは、副担任のホームルームが終わると足早に教室を出て行った。今日はどの部活も休みになって、すぐに学校はしんとした雰囲気につつまれた。

灯りが落ちた校舎を私はゆっくりと散歩した。ぶらぶらしているフリをして、あるいは用事のあるフリをして、私はよくこうやって校舎内を歩く。それは、先生に偶然会えないかと期待していたからだった。どこかですれ違って、挨拶でも注意でもなんでもいい、話しかけてもらうのが楽しみで。

でも今日先生はいない。これから先も、もう私が気持ちを寄せてもいい先生はいない。駐車場に今日はゴルフは止まっていないし、もう街で追いかけることもできない。

ずっと出なかった涙が出てくる。ああ、とけちゃったんだ。汚くなるのにね。ハンカチを出す気にもならなかった。

「かぐらちゃん、まだ残ってたの」

いつの間にか林君が廊下の先に立っていた。

「雪つもりだしてるよ、早く帰んないと」

「そういう林君も早く帰りなよ」

「いや、俺はすることがある」

林君はニヤリとした。

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