ゆきだるまとけたら 6
学校から駅までの道のり。何度振り返っても、付いて来ている。早足で歩いてもゆっくり歩いても、その距離は一定だった。
「あのさ、林君。何か用?」
「別に。俺も帰ってるだけ。駅までこの道が一番近いじゃん」
にこにこと林君は答える。何この人。「もういいよ」私は引き離すのをあきらめて、林君の横に並んだ。
「あ、ねぇねぇ。ゆきだるまアイス、サービスだって」
ゆきだるま、その禁句ワードを林君が口にする。睨みながら指さす方を見ると、夏過ぎに出来たアイスクリーム屋だった。
「かぐらちゃん、食べていこうよ」
「朝雪降ったんだよ? この寒い日にアイスなんて」
言っているそばから、林君は店に入って行く。仕方なく後について店に入った。
「ふぅん。レギュラーサイズをたのむと、キッズサイズのアイスをプレゼント、か。大きいのに小さいのがのってゆきだるまアイスってことね」
林君はふむふむとポスターを読み上げると、ショーケースのアイスを選び出した。
「俺、レギュラーがチョコミントでキッズがマカダミア!」
「そちらのお客様は」
店員に聞かれて慌てて選ぶ。
「えっと上がバニラで下がチョコレート」
カップに盛られたゆきだるまアイスを渡される。結局頼んじゃった。
小さなプラスチックスプーンでちびちびと救い、なめながら歩く。
「うーん、寒い日にアイスも乙だね。ゆきだるま可愛いし」
林君は「ねっ」と私の顔をのぞき込んでにこりと笑った。この人、案外背が高いんだ。並んではじめてわかった。どうして、私なんかにかまうんだろう。無愛想で、斜にかまえてて、子どもっぽい私なんか。
からかってるのかな。アイスを食べながらこっそり林君を観察する。スニーカーは汚れていて、ズボンからはシャツが出ている。鞄には、野球帽がひっかかっている。
「林君、野球部なの?」
「そうよー。知らなかったの? 同じクラスになって何か月」
林君が笑ったとき、私たちの横を一台の車が通り過ぎていった。黒のゴルフだった。
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