同期でいたい 9-1--朝--

どこか遠くでピピピと音がする。それが止まったかと思うと、ガツンと頭に何かあたった。
「いたっ」
「あ、悪い。こんな近くにいると思わなかった」
目覚ましを止めた高木のひじが、私の頭にあったらしかった。高木は頭をなでながら、
「こんな、近くにいたんだよなー」
ともう一度言った。

実は私は、ほとんど眠れなかった。
高木が寝ているのかどうかよく分からなかったけど、ずっと私はその腕の中か胸の横あたりにいて、身動きすらあんまりできなかったのだ。

覚悟を決めた割に、何も伝えることが出来ずにただ隣にいるだけで朝を迎えてしまった。
朝日が差し込むベッドで、二人ともぼうっとそのまま横たわっていた。

唐突に高木は起き上がって、どこかへ行ったかと思うと、やがてサーサーと水の音がしはじめた。シャワーを浴びに行ったらしい。

うつ伏せになってスマホを触っていると、高木は髪を拭きながら部屋に戻って来た。

「起きた?ナツキも浴びてきたら」
と言いながら、ノートパソコンを立ち上げる。
「今日仕事するの?」
「いや、引越し準備で休みもらってるから、メールチェックだけ…」
高木はカチカチとメールを処理していく。

「あのさ、今日私も有休とるから、遊ばない?」
「うん?」
私が言うと、高木は聞き返して、ふっと笑った。
「ナツキはプロジェクトあるだろー。さぼんなよ」
カーテンを開け外を見て、まぶしそうに顔をしかめていた。
「いいの!一日くらい。ほら、天気いいし」
ベットから降りて、私は言った。

うーんと高木は考え込むので、もうひと押しする。
「私だって、たまには息抜きしたいよ。ほら、最後の思い出作りにさ」

高木の目をじぃっと見上げる。
「…まぁいっか。一日くらい」
高木は、やっと許してくれた。
「うん!映画でも観ようよ」

私は、課長に電話で休むことを伝える。少しだけ悩んで体調不良ということにした。

つづく

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(課長(察し))

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