ゆきだるまとけたら 5
「あの、ゆきだるま。ごめんなさい」
「ん? あぁ。子どもっぽいことやめてね」
先生はとんとんと、持っているノートで自分の肩を叩いて言った。やっぱり子どもっぽいと思われたんだ。下を向く。
「関口さぁ、そう言う風に下向かずに、もっと笑った方がいいんじゃない?」
唐突に先生がそう言った。
「笑ったら可愛いんだから」
「えっ」
どきりと心臓が跳ねた気がして、顔をあげる。先生はにこりと笑った。
「クラスの男子からも人気でるかもよー。ほら、林だってさ関口と話して嬉しそうだったし」
「……なんでそんなこと言うんですかっ」
期待した私がばかだった。
「ばか、本当ばかっ」
そう叫んで背中を向けた。「なんだよ教師に向かってばかって」先生がまだ何か言っていたけど、教室に駆け戻って扉をばんっと勢いよく閉めた。
教室の中では林君がにやにやしていた。この人がまだいるの、忘れていた。どうせさっきの会話が聞こえたんだろう。よほど……先生くらいに、鈍感じゃなければ、私の先生への気持ちに気が付いただろう。
はぁ、と息をはいて天井を見つめた。白黒の点々が目に飛び込んでくる。雪に混じったゴミみたい。
ゆきだるまは溶けたらきたない。ゆきだるまなんて子どもっぽい。頭の中でそうつぶやいた。
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