同期でいたい 12--目線--

ミノリの披露宴は、都内の式場でつつがなく行われた。席は同期女子と男子で別れていたので、高木とは一度も話さなかった。

デザートビュッフェが振舞われた時間、外の喫煙コーナーで、高木はぼうっとタバコを吸っていた。
色とりどりのケーキをお皿に取りながら、その姿を盗み見る。それまで見ないように気をつけていたから、その日はじめてしっかりと高木を見た。高木は、何にも変わっていないように見えた。

二次会は、会社の最寄り駅近く、イタリアンの立食形式で行われた。

新郎友人がしつこく話しかけてくる。いつもならスルーだけど、今日は愛想よく接した。
高木がこちらを気にしていることに、気がづいていたからだ。

私は絶対に、そっちを見てやらなかった。この、久しぶりに会えるはずだった、今日の機会を、私は一度も高木の目を見ず終わらせるつもりだった。

「ナツキ…」ミノリが花嫁らしかぬ心配した表情でやって来て、私に囁いた。
「大丈夫?」
「何よー。もう何でもないって」
「でもさ…」
「本当だってー。私も東京出身の彼、見つけるからー!」
明るく言って、ミノリの背中を押した。
「ほら、花嫁は笑ってないと。旦那さん待ってるよ」
「今度、またゆっくり」
ミノリはやっと、笑顔になって新郎の方に戻っていった。

「三次会行く人ー!」
しつこかった新郎友人が声を張り上げる後ろで、私は元同期の女の子に耳打ちした。
「ごめん、私これで帰るから」
「えーナツキー。久々にゆっくり話そうよー」
「ごめん、今度、また」
バイバイっと小さく手を振り、早歩きでその場を後にした。

気づけば、駅裏の公園を横切っていた。
ひどく泣きたい気分だった。

公園を抜けると、あのマンションが見えた。
エントランスの灯りを眺めて、クラッチバックから、社用携帯を取り出す。
クリーム色の小鳥が、ゆらりと揺れた。

「ナツキ」
振り返ると、高木が立っていた。

つづく

#恋愛 #小説 #恋愛小説

もしも「いいな」と思われたら、ぜひサポートお願いします♩ZINE作成の資金にさせていただきます。