見出し画像

謎が予測可能回避不可能にひき殺されるラブコメミステリ 柾木政宗『朝比奈うさぎの謎解き錬愛術』

 お約束のお笑いみたいなのに非常に弱い私です。「#予測可能回避不可能」「#腹筋崩壊」タグには腹筋を鍛えられました。「くるぞ、くるぞ……」からのお約束の展開で分かっているのに笑ってしまうあれは何なのでしょうね。今回は「#予測可能回避不可能」タグをつけたいミステリー小説だと思った一冊の感想を記します。

 本来予測できてはいけないジャンルのミステリーなのに、予測可能回避不可能タグを付けたい作品が柾木政宗『朝比奈うさぎの謎解き錬愛術』です。焦茶さんイラストの表紙でジャケ買いしたんですが、内容も面白いです。

 なぜか事件に巻き込まれてあらぬ疑いを毎回かけられてしまう売れない探偵の迅人と、彼のストーカーの朝比奈うさぎの二人のラブコメミステリです。本著は全4話、1話完結の謎解きで構成されていて名探偵コナンのように次々と事件が発生します。予測可能といってもミステリの謎が予測できてしまうわけではないです。

「迅人さん、うさぎのこと好きなのですね」

 うさぎのこの決め台詞が出ると、”迅人はうさぎが好き”という命題が解かれます。迅人は全力で否定しますが。その勘違いの推理の過程でなぜか殺人事件の真犯人が明らかになります。しょうもない結論を出すために暴かれる真犯人が不憫で思わず笑ってしまいます。まさに予測可能回避不可能です。

 ミステリの仕掛け自体も面白く、各話で推理に必要な材料があらかじめ提示されテンポよく事件が発生します。私は自分で謎を解くタイプではないので推理パートまでサクサク読んでしまいましたが、自力で推理しようとしたら決め台詞が出るまで読み進めて大丈夫です。今気づいたが、もしかしてこれはそういう配慮だったのか。。。?

ストーカー……?

 本の帯にはうさぎはストーカー美少女と書いてあるのでその先入観で読んでいましたが、読み進め、3話に入った時点で認識は変わってきました。うさぎは客観的な事実から事件の真犯人を推理していくんですが、迅人の一挙一動も客観的にみている節があります。迅人が好物のわらび餅をいつもより5秒長く味わったとかそんなレベル(これはこわい)で観察してます。基本は迅人の主観で進むのですが、行動を客観的に見ればたしかに気があるようなそぶりをしてます。ストーカー、ストーカー言ってるけどお前、そういうとこだぞ…。まあこの辺りはほぼギャグというかラブコメで読んでて楽しい部分です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?