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3Dメガネに不意打ちをくらった話

 部屋の片隅でほこりをかぶった映画館の3Dメガネを見つけおもむろにかけた。

 その状態で家の中をぶらぶらしていた。私は暇を持て余していた。

 自分の滑稽な姿を見てやろうと鏡の前に立った。

 鏡を見ると目がチカチカする。片目をつぶると鏡の中で片方のレンズが真っ黒くなっていた。逆の目をつぶると逆のレンズが真っ黒くなる。

 まぁ偏光板が入っているからそうなるだろうなとこれは予想通りだった。

 自分が思い込みをしている事にこの時は気づいていなかった。

・・・

 洗剤で作ったシャボン玉の虹色の干渉も見たりしていると、左右の目で同じものが見えていることに気がついた。

 左右の目で別のものが見れるのを期待していたのだが、なんだか少し予想と違うことに気がつき始めた。

 もう一度鏡の前へ行く。片目をつぶる。

 自分と目を合わせる。つぶった目だけが見える

なぜ…

 同じ方向の偏光板は重ねても光を通すはずだ。ならば開いた目が見えるはず。今目の前で起きている事はその真逆だ。

 自分が勘違いしていることに気がついた。

 調べてみると、映画館の3Dメガネには円偏光と直線偏向を使うものがあるようだ。手元のメガネは円偏光のタイプだった。

 直線偏向のイメージしかなかったのでそう誤解していた。

 鏡を見たときに起こったことを簡単に言うとこうだ。

 目に入る光はこんな経路を通る。

 目やまぶたで反射した光が3Dメガネをいちど通過し鏡で反射して戻ってくる。戻ってきた光が再び3Dメガネを通過して目に入る。

 目に入る光がほとんどなければメガネが真っ黒に見えると言うことだ。

 光が消えてしまった理由は2回3Dメガネを通過して光が打ち消しあったからである。

 簡単に言うと、光がメガネのレンズを通過するときにメガネの上下に振動する光と左右に振動する光で90°波がずれる。2回通過すると90°を2回で180°ずれる。180°ずれると山と谷がひっくり返っている状態となり、足し合わせると打ち消される。

 そのため真っ黒に見えると言うことだ。

・・・

 こんなおふざけから、自分の思い込みを不意打ちのように気づかされるとは。

 思い込みをせずに、実際に起きていることを受け止めて考えることが大事だと思いました。

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