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絵を描けなくても、マンガを作れる時代に

今回、無料の3Dモデル約30個を使って、絵を描くスキルのない自分が初めてマンガの作品を作ってみたので、実践したことや考えたことを忘れないうちに言葉にしておく。

ちなみにこちらのマンガ。(Twitterに投稿した画像をまとめたもの)

ほとんどの線を自動で描画したマンガ

このマンガは少し特殊な作り方をしていて、ほとんどの線は、ペンではなく3DCGモデリング用のソフト(Blender)によって描画されたもの

そのソフトを使うと、キャラや物体を3D空間に配置し、好きな角度から撮影して画像にすることができる。そのとき、モデルの輪郭線を描画できてしまう。

例えば、こんな感じでモデルを配置すると…

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こんな絵を作れる。

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3Dなので、同じモデル配置のまま、カメラの位置や角度を動かすと、視点を変えたシーンになる。

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今回は使っていないけど、光を当てれば影を付けることもできる。雰囲気がガラッと変わる。

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ちなみに線画については、ペンの入り・抜きの太さも細かく設定できるし、線を出してほしくない部分を描画対象から除くこともできる。

画像ができたら、マンガ作成ソフトで、コマ枠やセリフ、効果線を付けて、表情などの細かい部分を手で書き込めば完成。

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こうして、ほとんどの工程を、ペンを使わずに作った。

もちろん、線を描かない代わりに、モデルを選んだり、配置したり、ポーズを取らせたり、画像出力したりといった手間はかかる。Blenderでゼロからその操作を覚えるのは、それなりに大変かもしれない。あと、表情や速い動きのある描写は、手描きの方がしっくりきた。

でも、それを補って余りあるほどの便利さを感じた。

3Dモデルでマンガを描いてみて感じたこと

今回のマンガ制作は、前回書いた記事を実践に移したもの。「マンガ制作に3Dモデルを使うと、便利でサクサク描けるのでは?」という予想が、実際どんなものなのかなーと。

結果としては、想像通りに便利だった。

思ったとおり、一度作ったモデルを別のシーンで使い回せたり、好きな角度から描写できたり、気軽に描き直すことができたりするのはとても便利で、効率的に作成できた。各オブジェクトが3Dとして存在するので、パースの知識がなくても問題ない。

加えて、意外に良かったのは、線が自然だったこと。

3Dモデルをベースに線が描かれるので、「マンガっぽくない違和感」が出るだろうと思っていたが、読んでいただいた方からは「気づかなかった」という声をいくつか頂いた。

そして何より、そもそも絵のスキルがない自分が、違和感なく読めるマンガを作ることができたのは感動だった。

自分で考えた架空のストーリーや言葉を、1つのコンテンツとして表現し、見知らぬ読者から「めっちゃ面白い」と言ってもらえたのは、普通に生活していても味わえない新しい感覚。


マンガは、ストーリー、セリフ、コマ割り、絵といったいろいろな要素があり、1人で全てをこなすのはなかなか大変だと思う。

でもこのように一部でも効率化できると、マンガを描くハードルが下がり、より面白い作品が生まれやすくなるんじゃないかなと感じた。きっとそのうち、そんな流れが進むはず。


ここから先は、3Dに関係なく、マンガを作っているときに面白いと思ったことを書き残しておく。

コマ割りや構成を考える面白さ

まずは、マンガを描く側に立って初めて気づいた点を少し。普段読んでいるときには、マンガのコマ割りや構図なんて、驚くほど意識していないことに気付かされた。例えばこんな内容。

テンポよく、違和感なく、楽しんで読んでもらうためのコマ割りは?構図は?キャラの表情は?セリフ回しは?…など、描き出すと考えることがたくさんある。漫画家の皆さん、マジで凄い。。

もちろん正解は人それぞれだとは思いつつも、こうして初めてマンガを作る側の気持ちになると、見える景色が変わるのは本当に面白い。

下記は、自分が3DCGモデリングを始めた時に感じたメモ。この辺りの感覚と似たものを感じた。

駅をモデリングして以来、初めて電車に乗った。駅の天井とか柱の繋ぎ目とか、今まで気にも留めなかった箇所やネットで調べにくい箇所は想像込みで作ってたから、リアルでしっかり見れて面白かった。バーチャルで物を作るとリアルにも興味が出るのはとても良い

サビや経年劣化みたいにランダム性を持って自然発生するものは、現実では疎まれるのに、CGの世界では「よりリアルに見える」という価値を生んでいるのは面白い

「マンガ」というコンテンツの力

また、別の視点として、「マンガ」そのものの力として、「ストーリーもののコンテンツの作りやすさ」を強く感じた。

以前、3Dモデルを使ってアニメーションを作ってみたけど、たった数秒なのに、連続した時間軸を表現するのが本当に大変だった。

いずれ効率化されていくとは思うけど、現時点では個人の趣味としては、アニメーション制作は重過ぎるなぁ…と。ちゃんとしたものを作るには、それなりの人数や時間が要るのは否めない。

一方で、マンガは瞬間を切り取り、その組み合わせで表現できるので、長めのストーリーでも比較的容易に作れる。そういう意味で、「個人によるストーリーの表現方法」として扱いやすいと思った。


…そんなことを、初めてマンガにチャレンジして感じた、というお話でした。絵が描けないけどマンガづくりに興味がある方は、試してみても良いかも?


補足

Blenderによる線画抽出は主に下記の記事を参考にして、コンポジットノードで画像としてまとめて出力させています。

本マンガで使用させていただいた3Dモデル

3Dモデルは漫画に合わせて一部加工しているものもありますが、実際の3Dモデルは漫画で見るより魅力的です。ぜひご覧になってください。

・主人公:VRoid(デフォルトのキャラクター)
・トカゲ:Lizard Wizard by SadAlexey
・おじさん:Random Guy by Pawel
・彼女:Just a girl by 腱鞘炎の人
・部屋:Low poly living room by Vladek
・照明、椅子、リンゴ、スマホ:model+model
・寿司:Stylized Salmon Nigiri Sushi PBR Learning by chenkl
・ソファ:Modern Sofa by 3dimentionalben
・ギター:Gibson from rickgreeve by Francesco Coldesina
・猫型ロボット:Doraemon by sharmadeepakkumar991
・ラーメン:Noodles_Food by San CG
・お金:Money - Lowpoly by Shrine Of The Fury
・バッグ:Family-style bag by Arte Hexe
・服:kimono by adityajaiswal9968
・車:'33 Ford Hot rod - Low poly modelby Daniel Zhabotinsky
・指輪:Gold Ring's by DineshThennarasan
・伊之助:Inosuke - Kimetsu no yaiba (Demon Slayer) by PC_0712
・キズナアイ:配布モデル
・おじさんの女性アバター:VRoid(デフォルトのキャラクター)
・トカゲ君が美女だったらの人:原神の配布モデル
・主人公の銃:9 mm by Slava Zemlyanik
・トカゲ君の銃:Drakefire Pistol by Teliri
・未来の凶悪モデル:Dragon Quest Slime by rtql8d
・地球:Earth by Axt
・剣:Sord by mddilshadali2410
・脳:Brain by maheshshinde777
・グラフ:3D Graph by jlwande2

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