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シナリオ⑤

第一章 図書館

前回までのあらすじ

 高3の夏、友人のユウマと地元の図書館を訪れていた。ある日、図書館内で同じ高校に通うのんという女性に出会う。彼女の名前と存在は、以前からSNSを通じて知っていた。しかしリアルで会うのは、今回が初めて。初めて対面したことで、僕はのんに一目惚れしてしまった。そこで彼女と仲良くなりたいと考え、メアドを記した置き手紙を渡す。人生で2回目の置き手紙作戦の行方は、、、、、、。

勇気をくれる歯医者さん

 風呂から上がり、晩御飯を食べる。部活を引退してからは、このルーティンを徹底していた。髪はドライヤーを使うほど伸ばしていない。そのため体を拭き晩御飯にありつくまで、全くもって時間がかからなった。

 これといって、両親と会話するネタはない。そんなお年頃の僕は、晩御飯を済ませ再び自分の部屋へ戻る。部屋への階段を昇りきったところで、先ほどのメールの存在を思い出した。

 「あっユウマに、図書館に行かんこと伝えんと。」

 置き手紙を見つけた際の、のんの反応を見て僕は今後図書館に行かないことを決めていた。小学生の頃のトラウマが蘇ったからである。あんな背筋が凍るような思いをしてまで、図書館で勉強する必要はなかった。

 部屋の扉を閉め、真っ先にCDオーディオを稼働させる。この日はシャッフル再生に切り替える。栄えある1曲目に選ばれたのは、GReeeeNの「口笛」だった気がする。

 GReeeeNは僕に、いつも勇気を与えてくれる。部活動で結果が出ない時、「歩み」という曲が何度も奮い立たせてくれた。友達と喧嘩した時、「涙空」を聴くことで素直に「ごめんね」が言えた。

 今回も無意識のうちに、GReeeeNから元気を貰おうとしていたのかもしれない。ちなみに失恋の際には「またね。」がオススメだ。

 「口笛」を聴きながら、ガラパゴス携帯を開きモバゲーへ。当時流行ったゲームに何となく手をつける。

 あらかた飽きてきたところで、ゲームを閉じメールを確認する。ユウマからであろうメールに返信するためだ。

 いざ受信ボックスを開く。すると、その画面には見覚えのないメールアドレスが映し出されていた。

 一瞬目を擦る。

 夢か否か区別するために目を擦るなど、人生で初めてだった。そんなアニメの主人公のようなリアクションをしたのち、メール本文にカーソルを合わせる。そして決定ボタンを押した。

 「メールアドレスありがとう!一瞬びっくりしちゃって、不審者からの手紙と思っちゃった(笑)のんです。よろしくお願いします。」

 本文には、そう記されていた。

 その時、部屋でこだまするBGMはGReeeeNの「キセキ」に変っていた。CDオーディオは、陰ながら大仕事をやってのけていたのだ。

 GReeeeNは僕に、いつも勇気を与えてくれる。

 キセキを聴きながら、彼女に初めてメールを送った。

 


 




2020年4月の現在、この月末日にのんと2人で会うことになっている。往路の車内ではGReeeeNを聴くつもりだ。また勇気を貰うために。

続く

 

 

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