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シナリオ⑫

第二章 大学

前回までのあらすじ

 高3の夏、友人のユウマと地元の図書館を訪れていた。ある日、図書館内で同じ高校に通うのんに、一目惚れしてしまった。そして夏休み最終日、2人は付き合うことになる。その4か月後、理由も分からずのんから別れを告げられる。そして3年後、のんからの連絡がきっかけで再開を果たす。この再開が功を奏し、2人は復縁することに、、、、

終わりの始まり

 始まりが来れば、いつか終わりが来る。夫婦の関係だってそうだ。非常に不謹慎ではあるが、夫婦のどちらかが他界してしまえば物理的に接する関係は終わってしまう。心はいつまでも繋がっているにしても、直接的に相手に触れることは叶わない。

 人生もそうだ。人間生まれた時点で、死という終わりへの一歩を踏み出しているのである。

 つまり万事において、「始まり」とは「終わりの始まり」だ。

 

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 復縁してから数週間後、人生初の鹿児島行きを果たした。

 桜島の足湯に浸かった。足湯に浸かると目の前には、本島の町が一望できた。加えてその足湯は屋外にある。心地良い風がその絶景をより際立たせた。「のんもロケーションにこだわる方なのか?」そんな仮説を頭で巡らせては、にやついたことを覚えている。

 「遠距離で会うってこんなかんじなんだね。」

 綺麗な肌感に包まれた素足をお湯に入れ彼女は呟く。確かに以前付き合っていた頃に感じるものとは、全くといって違っていた。

 特別感という3文字で言い表すには、非常にもったいない感覚である。

 「ほんとやね~。」

 特別感という言葉をどうしても使いたくない。僕はその考えが譲れなかったため、最低限で最善策な共感を示すことに留まった。

 他には有名なかき氷屋、独特の雰囲気を感じさせる古風居酒屋、黒瀬という焼酎がこれでもかと並ぶ焼き肉屋を周った。全ての食事処はまさに絶品であった。

 のんはありったけの愛を持って、鹿児島という地を案内してくれた。

 この2泊3日の鹿児島滞在は、深い思い出として、今でも僕の人生を豊かにしてくれる。

 本当に感謝している。僕の青春をこれだけ彩ってくれたのだから。

 

 

 しかし1つだけ彼女のことに対してひっかかる点がある。

 それはいつも別れの理由を言わないことだ。言えないのかもしれない、もしくは相手への配慮なのかもしれない。

 鹿児島を訪れた1ヵ月後のんは突然、別れを切り出してきた。

 始まったばかりの2人のシナリオは、ありえない速度で終わりのエンドロールを向かえていた。


続く

 


 

 


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