シナリオ⑦
第一章 図書館
前回までのあらすじ
高3の夏、友人のユウマと地元の図書館を訪れていた。ある日、図書館内で同じ高校に通うのんという女性に出会う。彼女の名前と存在は、以前からSNSを通じて知っていた。しかしリアルで会うのは、今回が初めて。初めて対面したことで、僕はのんに一目惚れしてしまった。メールアドレスを交換し、徐々に中を深めていく2人。そして夏休み最後の日、絶好のロケーションで彼女に思いを伝えた。
枯れ葉
高校生活最後の夏休みが終わり、新学期がスタートした。その2週間後には運動会の練習も始まる。
うちの高校では運動会のことを体育祭と言ってはいけない。そんな意味の分からない掟があった。
理由は至ってシンプルである。
「運動会は祭りではない。大会なのだ。勘違いするな!」
そんなことを、体育教員は頭の血管を浮かばせながら言っていた気がする。
そんな環境に3年間も通っていれば、この運動会概念が当たり前のように頭の中を洗脳していく。これこそ母校が、軍隊学校という言われる所以だ。
以上から夏休み明けの新学期では、鬼のような運動会練習が待ち伏せていた。
帰宅部、文科系部員の生徒たちはついていくだけでも必死である。バタバタ生徒が倒れることも日常茶飯事。当時はよくもあんなことを耐えていたものだ。
「いよいよ始まるね。」
共に下校するのんは言った。
僕たちは晴れてお付き合いをすることになった。夏休み最終日の告白直後、その場で彼女から2つ返事を貰うことができた。一目惚れの恋は、見事実ったのである。
「よく耐えたよね3年間。」
僕は答える。のんは茶華道部だったため、さぞかしこの季節は地獄の日々であっただろう。
「ほんとだよ(笑)生まれ変わるなら絶対この高校には入らない。」
そんな冗談を言いながら、寄り道ポイントであるいつもの公園に到着した。
近くの自販機で各々お気に入りのドリンクを買い、屋根付きのベンチに腰掛ける。僕たちはその公園で2時間も、3時間も過ごすことができた。
この時ばかりは運動会の存在も、受験の存在も忘れることができた。
周りに付き合っていることを言っていなかったせいか、学校ですれ違ってもよそよそしさが残る2人。そんな僕らにとって、この公園は唯一、気兼ねなく話せるかけがえのない場所であった。
授業→運動会練習→一緒に下校、そんな「The青春」な日々を送っていた。
そんな日常が当たり前に続いていくと、何の疑いもなく日々を過ごしていた。
そして地獄の体育大会は無事終了し、季節は秋を迎える。
僕は休日、部屋で携帯を開く。いつも通り、のんからメールが入っていた。
秋の下校道は、紅葉が綺麗に色づいている。僕らは、この季節も一緒に自転車を走らせ、あの公園に行くはずだった。お気に入りのドリンクを片手に、2時間も3時間も話すはずだった。
しかし枯れ葉と同様、そんな僕の儚い妄想は呆気なく散っていく。
続く
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